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個人事業主が会社設立するときの段取り|法人成りを7つの手順に分けて追う

会社設立 個人事業主 公開 2026年8月25日 最終更新 2026年8月25日 運営者:サイト運営事務局 本文 約6,033字

法人成りすると決めた方、決めかけている方へ

会社設立をすると決めたものの、何から手をつければいいのか分からない。個人事業主として開業届を出したときの手軽さを思い出すと、法人成りの手順は急に複雑に見えます。この記事は、その最初の一歩を踏み出すための道順です。

決めることと、書くことと、出すこと。会社設立の作業はこの3つに分かれます。順番を守れば、ひとつずつ片づけられます。

細かい書式の書き方までは踏み込みません。どの順番で、どこへ、いつまでにという骨格をつかむことを目的にしています。

会社設立の段取りを、先に全体像で見ておく

会社設立の段取りを、先に全体像で見ておくを表したイラスト
全体像を先に見ておくと、迷子になりません

個人事業主の開業届は1枚出せば終わりでしたが、会社設立はそうはいきません。ただし、やることが多いだけで、ひとつずつは難しくありません。法人成りの段取りは大きく、会社の中身を決める段階、定款などを書く段階、登記と届出を出す段階に分かれます。

会社設立から法人成りの完了までの流れ
7つの段取り。どこにいるか分からなくなったらここへ戻ります

このうち締切があるのは、後半の「出す」の部分です。前半の「決める」に時間をかけても誰にも怒られませんが、登記が終わったあとの届出には期限があります。会社設立の日程を組むときは、登記完了日を起点にして後ろ側の予定から埋めると抜けが出にくくなります。

個人事業主から法人成りする場合に特有なのは、この7つに加えて「個人側の店じまい」がぶら下がってくることです。これから初めて起業する人の会社設立と、すでに事業をやっている個人事業主の会社設立では、後半の作業量がまるで違います。取引先との契約、銀行口座、許認可、リース、保険——個人の名義で持っているものを法人へ移す作業が、登記のあとに待っています。

決める段階の所要
人によります。数日で決まる人もいれば、商号で1週間迷う人もいます
書く段階の所要
定款は1日で書けますが、認証の予約が取れるかどうかで前後します
出す段階の所要
登記の完了まで1週間から2週間程度みておくと安全です

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月25日確認)

商号と事業目的を決める——個人事業主の屋号はどうなるか

商号と事業目的を決める——個人事業主の屋号はどうなるかを表したイラスト
名前は後から変えられますが、変えるとお金がかかります

会社設立で最初に決めるのが商号、つまり会社の名前です。個人事業主として使っていた屋号をそのまま商号にする人は多いのですが、いくつか確かめることがあります。まず、同一の所在場所に同一の商号があると登記できません。法務省はオンラインの登記情報検索サービスを使った商号調査を案内しています。

次に、商号には「株式会社」または「合同会社」を必ず入れます。屋号が「まる山デザイン」なら、商号は「株式会社まる山デザイン」または「まる山デザイン合同会社」といった形になります。前に付けるか後ろに付けるかは自由です。

事業目的は広すぎても狭すぎても困る

事業目的は定款に書き、登記事項になります。狭く書きすぎると新しい事業を始めるたびに変更登記が必要になり、そのたびに登録免許税がかかります。逆に広く書きすぎると、金融機関の口座開設や許認可の審査で「何をする会社なのか」が伝わりにくくなります。個人事業主のときの事業内容を軸に、近い将来やりそうなことまでを含めるのが落としどころです。

屋号を商号に持ち込むかどうかは、実は取引の続き方にも関わります。個人事業主のときの屋号で覚えられている取引先が多いなら、屋号をそのまま残したほうが会社設立後の案内が楽になります。逆に、法人成りを機に事業の見せ方を変えたいなら、ここが名前を変える数少ない機会です。会社設立のあとで商号を変えると変更登記が必要になり、登録免許税がかかります。

許認可が要る事業は先に確認を建設業、飲食業、古物商、人材派遣など、許認可が必要な事業では、目的の書き方が審査に影響することがあります。法人成りの前に、所管の窓口で書き方を確かめておいてください。

出典オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について (法務省/2026年8月25日確認)

定款を作る。株式会社には認証が要る

定款を作る。株式会社には認証が要るを表したイラスト
定款は会社の設計図。あとから直すには手続きが要ります

定款は会社の基本的な決まりごとを書いた書面です。商号、目的、本店の所在地、資本金の額、発起人、事業年度などを書きます。株式会社の場合は、これを公証人に認証してもらう必要があります。合同会社は認証が不要で、ここが会社設立の費用と日数の差になります。

定款まわりの違い(株式会社と合同会社)
法人成りで合同会社が選ばれる理由の多くは、この2列の差にあります

紙の定款には収入印紙4万円が要りますが、電子定款であればかかりません。ただし電子定款には電子署名の環境が必要で、個人事業主が自分だけで用意するのは手間です。会社設立を専門家に頼むと、この分が実質的に相殺されることがあります。

定款には、必ず書かなければならない事項(絶対的記載事項)と、書いておかないと効力が生じない事項(相対的記載事項)があります。個人事業主が一人で法人成りする場合、この区別で悩む場面はほとんどありませんが、家族を役員に入れる、複数人で出資するといった形をとるなら、会社設立の前に一度専門家に見てもらったほうが安全です。あとから直すには株主総会や社員の同意が要ります。

定款で見落とされがちなのが事業年度です。決算期をいつにするかで、法人成り後の消費税の免税期間も、決算作業が忙しい時期も変わります。個人事業主のときは12月31日で締める以外の選択肢がありませんでしたが、会社は自由に決められます。ここは急がず考えてください。

出典9-4 定款認証 (日本公証人連合会/2026年8月25日確認)

資本金を決めて払い込む——消費税の判定にも効く

資本金を決めて払い込む——消費税の判定にも効くを表したイラスト
資本金は、税の判定と信用の両方に効きます

資本金は1円から設定できますが、実務では意味のある額を入れます。金融機関の口座開設や取引先の与信で見られる数字であり、当面の運転資金にもなるからです。個人事業主として貯めた事業用資金の一部を移す形で決める人が多いところです。

ここで必ず確かめたいのが消費税です。国税庁の説明では、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である新設法人は、基準期間がない事業年度でも納税義務が免除されません。法人成りの直後に消費税を納めるのは資金繰りに響くので、特別な理由がなければ1,000万円未満にしておくのが無難です。

  • 払込みの方法発起人個人の口座に振り込み、その通帳の写しを登記の添付書類にします。
  • 会社の口座はまだない登記が終わらないと法人口座は作れません。順番はこれで正しいです。
  • 現物出資という手もある個人事業主のときの車や機械を資本金に充てる方法です。手続きは増えます。

もうひとつ、資本金は会社設立のあとで増やすことも減らすこともできます。増資は登記が必要で登録免許税がかかり、減資はさらに手間がかかります。ですから最初は「当面の運転資金として無理のない額」で置いておき、事業が育ってから考えるのが現実的です。個人事業主のときの手元資金をすべて会社に入れてしまうと、個人の生活費が足りなくなることがあるので、そこも含めて決めてください。

許認可には最低資本金がある業種も建設業や人材派遣など、財産的基礎を求められる業種では、資本金の額が要件になっていることがあります。会社設立の前に所管の窓口で確かめてください。

出典No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき (国税庁/2026年8月25日確認)

登記を申請する。ここではじめて会社ができる

登記を申請する。ここではじめて会社ができるを表したイラスト
申請した日が成立日。ここから法人としての時間が始まります

定款と払込みの証明がそろったら、法務局に設立登記を申請します。会社の成立日は、登記が完了した日ではなく申請した日です。取引開始日や決算期の始まりを気にしている場合は、この点を押さえておいてください。

株式会社の設立登記でよく求められる書類
法務局の様式ページに、機関設計ごとの雛形が並んでいます

会社設立の登記を自分でやるか、司法書士に頼むかはよく迷うところです。費用だけを見れば自分でやったほうが安く済みますが、補正で法務局に往復すると時間を取られます。個人事業主として本業が動いている状態での法人成りなら、本業を止めない段取りを優先するという考え方も十分に合理的です。

法務局は申請書の様式を公開していて、取締役会を置かない会社の発起設立、合同会社の設立など、型ごとに雛形が用意されています。個人事業主がひとりで法人成りする場合は、たいてい取締役1名の一番簡素な型に当てはまります。

登記が完了すると、登記事項証明書と印鑑証明書が取れるようになります。法人口座の開設、社会保険の届出、取引先への案内——会社設立後の手続きはほぼすべてこの2つを求めてくるので、完了したら数通まとめて取っておくと動きやすくなります。

出典商業・法人登記の申請書様式 (法務局/2026年8月25日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

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会社設立後の届出——税務署・都道府県・年金事務所

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期限が短いものほど、先に手をつけます

登記が終わったら、届出の段階に入ります。ここには期限があるので、法人成りの日程を組むときは登記完了からの日数で管理してください。

会社設立後に出すもの(期限のあるもの)
期限の短いものから順に並べています

青色申告の承認申請書は、うっかりすると効果が1年遅れます。国税庁の案内では、設立第1期については設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期末のいずれか早い日の前日までとされています。法人成りしたら、まずこの1枚を出す、と覚えておくくらいでちょうどよいです。

社会保険の新規適用届は事実発生から5日以内と、飛び抜けて短い期限です。会社設立をした個人事業主が一番つまずくのがここなので、登記の完了を待つ間に書類をそろえておいてください。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月25日確認)

個人事業主としての店じまいを、同じ時期に済ませる

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法人側と個人側、両方の手続きで一組です

会社設立が終わっても、個人事業主としての登録は残ったままです。税務署に出す個人事業の開業・廃業等届出書をはじめ、個人側の店じまいは別に手続きが要ります。ここを忘れると、翌年に個人と法人の両方で申告を求められることになります。

個人側で出すもの(該当するものだけ)
出すもの 出す先 時期の考え方
個人事業の開業・廃業等届出書 税務署 その事実があった年分の確定申告期限まで
所得税の青色申告の取りやめ届出書 税務署 取りやめようとする年分の確定申告期限まで
給与支払事務所等の廃止届出書 税務署 事実があった日から1か月以内
事業廃止届出書(消費税) 税務署 事由が生じた場合、速やかに
個人事業税の事業廃止の申告 都道府県 自治体の案内による

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いずれも国税庁の手続案内の記載にもとづきます。事業の一部だけを法人に移す場合は、扱いが変わることがあります。

さらに、税務署以外にも手を入れる先があります。取引先との契約の名義、事業用の銀行口座、リース契約、賃貸借契約、各種の許認可、そして車両の名義。会社設立の直後はどうしても法人側の手続きに気を取られますが、個人名義のまま残っているものは、あとから一つずつ出てきて手間になります。法人成りを決めた時点で、個人名義のものを紙に洗い出しておくと後が楽です。

名義を切り替えるときは、切替日をそろえておくと事故が減ります。契約の名義変更、口座の切替、請求書の差出人。日付がばらばらだと、個人の売上として計上すべきか法人の売上とすべきか分からない取引が生まれます。会社設立の日を境にすると決めておけば、経理の判断が一本に決まります。

なお、法人成りをしても個人事業を完全にはたたまない形もあります。不動産の貸付だけ個人に残す、複数の事業のうち一部だけ会社に移す、といった場合です。この場合は廃業届が不要になることもあるので、自分の残し方を先に決めてから書類を選んでください。

出典A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続 (国税庁/2026年8月25日確認)

まとめ|会社設立の段取りは、後ろから決めると崩れない

まとめ|会社設立の段取りは、後ろから決めると崩れないを表したイラスト
迷ったら、登記完了日から逆算します

ここまでを振り返ると、会社設立の手順は7つでした。商号と目的を決め、定款を作り、認証を受け、資本金を払い込み、登記を申請し、設立後の届出を出し、個人事業主としての店じまいをする。ひとつずつは難しくありません。

法人成りを経験した個人事業主がよく言うのは、「決めるのに一番時間がかかった」ということです。商号、事業目的、資本金、決算期。どれも会社設立の書類に書く一行ですが、その一行を決めるのに数日かかります。書類の作成や登記の申請といった手を動かす作業は、実はそれほど時間を食いません。日程を組むときは、決める時間を多めに見ておいてください。

組み立てのコツは、登記完了日を先に置くことです。取引先への案内をいつ出すか、法人口座をいつ作るか、社会保険をいつから切り替えるか。これらはすべて登記の完了を待つので、そこを基準にすると前後の予定が自然に決まります。

  • 自分でやるか、頼むか登記だけなら自分でもできます。ただし定款の作り方と登記の様式で時間を使います。
  • 費用の差だけで決めない電子定款の印紙代4万円が浮くぶん、頼んでも差が小さくなることがあります。
  • 設立後の設計は別の話会社設立の手続きが終わっても、役員報酬や決算期の設計は残ります。ここが法人成りの本番です。

そしてもうひとつ。会社設立の手続きそのものは、慣れた人に頼めば数週間で終わります。しかし法人成りの成否は、その後の運転で決まります。役員報酬をいくらに置くか、決算期をどこにするか、社会保険にどう入るか。この3つは会社設立の手続きが終わったあとに効いてくる話で、しかも後から直すのが面倒な部分です。段取りを走り切ることと同じくらい、走り出したあとの設計に時間を使ってください。

このサイトでは、それぞれの段取りを個別のカテゴリーで掘り下げています。定款と登記の実務、資本金の決め方、設立後の届出、そして個人事業主側の廃業手続き。順番に読み進めれば、法人成りのひととおりが見えるように並べてあります。

出典税理士に関する情報 (国税庁/2026年8月25日確認)

段取りを紙に書き出して、日付を入れてみてください

会社設立の手順は、頭の中だけで組み立てようとすると必ずどこかが抜けます。7つの段取りを紙に書き出して、それぞれに日付を入れてみてください。認証の予約が取れる日、払込みができる日、登記を出す日。埋まらないところが、いま調べるべきところです。

個人事業主としての店じまいも、同じ紙に書いておくのがおすすめです。法人側だけを見ていると、こちらは後回しになりがちです。

書き出した予定に無理がないか、専門家にいちど見てもらうと安心です。とくに社会保険の5日以内は、動き出してから気づくと間に合いません。

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個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

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