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年収の目安を超えても会社設立しない人、届かなくても法人成りする人|個人事業主の判断

個人事業主 法人化 年収 公開 2026年8月25日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約6,087字

目安どおりに動けない事情がある方へ

課税所得は目安を超えているのに、どうしても会社設立に踏み切れない。あるいは目安には届いていないのに、法人成りしないと事業が進まない。そういう板挟みにいる個人事業主の方に向けたページです。

目安の数字は税の話です。事業には税以外の事情がいくらでもあります。 この記事では、その外側にある理由を4つに整理します。

自分の判断が「目安から外れている」と感じている方に、それが変なことではないと確かめてもらうための記事でもあります。

目安の外側で判断が動く理由は4つに分けられる

目安の外側で判断が動く理由は4つに分けられるを表したイラスト
税の外側にある4つの事情を見ていきます

課税所得の帯だけで会社設立の判断が決まるなら、話は簡単です。しかし実際には、目安を超えていても個人事業主のまま続ける人がいて、届いていなくても法人成りする人がいます。

その理由を集めていくと、大きく4つに分かれます。取引の事情、採用の事情、許認可の事情、そして生活設計の事情。どれも税の計算には出てこないものです。

この4つは、税の目安を上書きすることがあります。取引先が法人としか契約しないなら、課税所得が300万円でも会社設立をするしかありません。逆に、あと2年で事業をたたむ予定なら、900万円あっても法人成りしない判断が合理的です。

税の目安と、税以外の事情の組み合わせ
税の目安と事情、どちらが強いかで枠が決まります

この図の左下——税では損でも事情で会社設立をする——という枠に入る人は、決して少なくありません。そしてこの枠にいる人ほど、「目安に届いていないのに法人化していいのか」と迷います。

結論から言えば、問題ありません。会社設立は税のためだけの手段ではないからです。以下、4つの事情をひとつずつ見ていきます。

なお、複数の事情が重なることもよくあります。その場合は、期日のあるものから優先してください。

出典税理士に関する情報 (国税庁/2026年8月25日確認)

理由1|取引の事情——法人でないと契約できない

理由1|取引の事情——法人でないと契約できないを表したイラスト
相手の都合は、こちらの数字を見てくれません

いちばん多いのがこれです。取引先の社内規程で個人事業主とは契約しないと決まっている、元請けの与信管理が厳しくなった、公共の入札に参加したい。どれも自分の課税所得とは関係なく発生します。

この場合、会社設立をするかどうかではなく、いつまでにするかが問題になります。相手の期日から逆算して、登記と法人口座の開設に2か月程度を見込んでください。

注意したいのは、相手が本当に法人格を求めているのかを確かめることです。与信や体制の問題であれば、個人事業主のままでも賠償責任保険への加入や体制の説明で解決することがあります。会社設立をしてから「そこまでは求めていなかった」と分かるのは、いちばんもったいない結末です。

それでも法人化が必要なら、税の損得はあとから調整します。役員報酬の置き方次第で、負担の増え方はかなり変わります。先に会社設立をして、あとから設計を整えるという順番でかまいません。

インボイスの登録番号が個人と法人で別になることも、この場面では効いてきます。取引先の経理に早めに伝えておかないと、請求のたびに確認が入ることになります。

確かめること
いつまでに法人であればよいか。法人格だけでよいか
逆算の起点
法人口座の開設。ここから2か月以上を見ます
あとから整えるもの
役員報酬、記帳の体制、個人側の廃業手続き

取引の事情で動く場合、税の試算を後回しにすることに抵抗を感じる個人事業主の方もいます。ただ、会社設立の日程が動かせない以上、順番はこうならざるを得ません。試算は登記のあとでもできますし、役員報酬を決めるまでに間に合えば十分です。

なお、取引先の要請で会社設立をした個人事業主でも、結果として法人成りしてよかったと感じる人は多くいます。信用が上がって取引の幅が広がる、という副次的な効果があるからです。

出典D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用) (国税庁/2026年8月25日確認)

理由2|採用の事情——人を雇いたい

理由2|採用の事情——人を雇いたいを表したイラスト
人を雇うかどうかは、税とは別の物差しです

人を雇いたい個人事業主にとって、会社設立は採用の道具にもなります。求人を出したとき、法人と個人事業主とでは応募の集まり方が違うという声はよく聞きます。

理由のひとつは社会保険です。法人はすべて厚生年金保険・健康保険の適用事業所になりますが、個人事業主の事業所は業種と人数によって扱いが分かれます。求職者から見ると、社会保険に入れるかどうかは大きな差です。

もうひとつは、事業の継続性の見え方です。法人は登記されていて、代表者に何かあっても事業が続く形になっています。長く働くことを考える求職者にとって、この差は小さくありません。

採用のために会社設立をする場合、課税所得の帯は判断材料になりません。人を雇えば人件費が増えるので、むしろ課税所得は下がります。それでも法人成りする理由が採用にある、ということです。

ただし、人を雇うと社会保険の手続きが毎回発生します。資格取得届、資格喪失届、算定基礎届、年末調整。会社設立をして人を雇うということは、この事務を引き受けるということでもあります。

個人事業主のまま人を雇うこともできますが、常時5人以上になると業種によっては社会保険の適用対象になります。いずれ人を増やす見通しがあるなら、早めに会社設立をして体制を整えるという考え方もあります。

それから、従業員から見たときの安心感という面もあります。個人事業主のもとで働くことに不安を感じる人は一定数いて、それは待遇の問題ではなく仕組みの問題です。会社設立をして雇用の形を整えることが、人が定着する条件になることもあります。

採用を理由に法人成りするときは、人件費が増えたあとの資金繰りを先に見てください。会社設立の費用より、そちらのほうが事業に効いてきます。

出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月25日確認)

理由3|許認可の事情——法人でないと取れない・移せない

理由3|許認可の事情——法人でないと取れない・移せないを表したイラスト
許認可は、税より先に確かめます

3つめは許認可です。業種によっては、そもそも法人でないと許可が取れないもの、法人のほうが要件を満たしやすいものがあります。この場合、課税所得の帯とは無関係に会社設立が必要になります。

逆に、すでに個人事業主として許認可を持っている場合は、法人成りのときに承継の問題が出てきます。個人の許可が法人に自動で移ることはありません。承継の制度がある業種もあれば、新規に取り直しになる業種もあります。

建設業、飲食業、古物商、産業廃棄物、運送業、人材派遣、宅地建物取引業。どれも扱いが違うので、会社設立の前に所管の窓口へ相談してください。 順番を間違えると、無許可の期間が生じる恐れがあります。

とくに気をつけたいのが、個人事業主の廃業届を先に出してしまうことです。許可の承継手続きが済む前に廃業してしまうと、許可が失効することがあります。税務署への届出と許認可の手続きは、別の時計で動いていると考えてください。

許認可がある事業で、会社設立の前に確かめること
ここを飛ばすと、事業が止まる恐れがあります

許認可の承継が使える業種でも、事前の認可が必要な場合があります。認可が下りる前に会社設立をして事業を始めてしまうと、問題になることがあります。個人事業主として許可を持っている方は、この一点だけでも先に確かめてください。

許認可の要件に資本金の額が入っている業種もあります。この場合、会社設立のときの資本金を要件に合わせて決める必要があります。消費税の免税を意識して1,000万円未満にしたいところですが、許認可の要件が優先されることもあります。

許認可がある事業の法人成りは、税の話より先に許認可の話を片づけてください。順番を守るだけで、事故のほとんどは防げます。

出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月25日確認)

理由4|生活設計の事情——数年先をどう見ているか

理由4|生活設計の事情——数年先をどう見ているかを表したイラスト
数年先をどう見ているかで、答えが変わります

4つめは、事業をこの先どうしたいかという話です。課税所得が目安を超えていても、あと数年で事業を縮小する予定があるなら、会社設立をしないほうが身軽です。

会社は、たたむのにも手続きと費用がかかります。解散と清算の登記、官報への公告、清算の申告。個人事業主なら廃業届を出せば終わる話が、法人成りしていると相当な手間になります。

逆に、この先も続ける、いずれ人に引き継ぎたい、という見通しがあるなら、早めに会社設立をしておく価値があります。法人であれば代表者が代わっても事業が続きますし、株式の形で承継できます。

個人事業主のままだと、事業主が働けなくなった時点で事業が止まります。取引先との契約も、許認可も、屋号も、本人に紐づいているからです。長く続ける事業ほど、この点が効いてきます。

それから、家族の生活も含めて考えてください。会社設立をして厚生年金に入れば将来の年金額が増えますし、配偶者が第3号被保険者になれる場合もあります。目先の税額より、こちらのほうが金額として大きいこともあります。

逆に、いま手元の現金が必要な時期なら、法人成りで固定費が増えるのは苦しくなります。生活の状況によって、同じ課税所得でも答えが変わります。

会社をたたむときにかかるお金(目安)
たたむ費用まで見ておくと、判断の重みが変わります

会社設立は事業の話であると同時に、生活設計の話でもあります。目安の数字だけで決められないのは、そのためです。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月25日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

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目安を超えていても見送る、という判断

目安を超えていても見送る、という判断を表したイラスト
超えていても動かない。それも判断です

課税所得が900万円を超えていても会社設立をしない個人事業主は、実際にいます。理由を聞くと、だいたい次のどれかです。

  • 事務を増やしたくない決算と申告、社会保険の手続き。本業の時間を削りたくない。
  • 数年で縮小する予定たたむ費用まで含めると、法人成りが割に合わない。
  • 売上の振れが大きい良い年だけ見れば得でも、悪い年に均等割が重い。
  • 会社のお金を自由に使えない個人事業主の身軽さを手放したくない。

どれも合理的です。会社設立で下がるのは税額であって、事業のやりやすさではありません。むしろ手続きの面では確実に不自由になります。

大事なのは、その判断を数字で裏づけておくことです。「税額は年30万円下がるが、事務にかかる時間と固定費で相殺される」と言えれば、周りに勧められても揺らぎません。

そして、条件が変わったら見直すと決めておいてください。売上が安定してきた、人を雇うことになった、取引先から求められた。そのときが会社設立を再検討する時期です。

見送ると決めた個人事業主も、法人成りの知識は持っておいて損はありません。いざ動くことになったときに、判断が速くなります。

会社設立をしない代わりに、個人事業主として使える手を厚くするという進め方もあります。小規模企業共済、経営セーフティ共済、確定拠出年金。どれも法人成りしなくても使える制度で、組み合わせれば相応の効果が出ます。

目安を超えているのに動かない人を「もったいない」と言う声もありますが、事務の負担や生活設計まで含めれば、その判断が正しいことは十分にありえます。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月25日確認)

目安に届かなくても踏み切る、という判断

目安に届かなくても踏み切る、という判断を表したイラスト
税で損でも、事業で得なら踏み切ります

反対に、課税所得が400万円台でも会社設立をする個人事業主がいます。取引先の要請、採用の計画、許認可の要件、融資の枠。理由は税の外側にあります。

この場合、税では不利になることを前提に、その不利をどこまで小さくできるかを考えます。役員報酬の置き方、決算期の選び方、消費税の免税期間の使い方。設計次第で、増える負担はかなり抑えられます。

融資を理由に会社設立をする場合、日本政策金融公庫の創業融資などは個人事業主でも使えます。法人でないと借りられないわけではありません。ただし、金額が大きくなるほど法人のほうが通りやすいという実感を持つ人は多いようです。

補助金や助成金も、法人限定のものと個人事業主も対象のものがあります。狙っている制度があるなら、その要件を先に確かめてください。会社設立をしてから対象外だと分かるのは避けたいところです。

税で不利になることを承知で法人成りするなら、その不利がいくらなのかを計算しておいてください。「年20万円多く払うが、その代わりにこの取引が続く」と言えれば、判断に納得感が出ます。

そして、課税所得は増えていくものです。いま400万円でも、会社設立をして事業が伸びれば数年で目安に届きます。先に法人成りしておくことが、結果的に正解になることもあります。

実際、会社設立をした個人事業主に「早く動けばよかったと思うか」と聞くと、税の面ではなく信用や体制の面で早いほうがよかったという答えが返ってくることが多くあります。数字は後からついてくる、という言い方もできます。

目安に届いていないことを理由に躊躇するより、事情があるなら動いたほうが早いという場面は確かに存在します。

出典創業融資のご案内|日本政策金融公庫 (日本政策金融公庫/2026年8月25日確認)

まとめ|目安は出発点であって、結論ではない

まとめ|目安は出発点であって、結論ではないを表したイラスト
数字を出してから、事情を足します

課税所得の目安は、会社設立を考えるときの出発点です。しかし結論ではありません。取引、採用、許認可、生活設計。この4つのどれかが効いていれば、目安の外側で判断が動きます。

順番としては、まず数字を出す。次に事情を足す。この順番を守れば、目安から外れた判断をするときも根拠を持てます。

数字を先に出しておく意味は、事情で動くときにも役立ちます。税で不利になると分かっていれば、役員報酬の設計でそれを小さくする手を打てるからです。

  • 数字を出す課税所得の帯と、3年分の推移
  • 事情を並べる取引・採用・許認可・生活設計のどれが効いているか
  • 優先順位をつける期日のあるものから。税の最適化はそのあと
  • 決めたら設計する役員報酬と決算期。ここで損得が決まります

個人事業主として事業を続けてきた方なら、数字も事情も自分がいちばんよく知っています。あとはそれを並べて比べるだけです。

会社設立をするにせよ、しないにせよ、根拠を持って決めた判断は後から揺れません。目安の数字はそのための材料のひとつとして使ってください。

出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月25日確認)

自分の判断は、どの枠に入りますか

税の目安に届いているかどうか。税以外の事情があるかどうか。この2つで4つの枠ができます。自分がどの枠にいるかが分かれば、会社設立の判断はほとんど決まります。

目安から外れた判断をしているとしても、理由が言えるなら問題ありません。個人事業主のまま続けるにせよ、法人成りするにせよ、根拠のある判断は後から揺れません。

許認可がある事業の方は、税の話より先に所管の窓口へ相談してください。順番を守るだけで、事故のほとんどは防げます。

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個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

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