本文へ移動

役員報酬と社会保険料の関係|個人事業主が法人成りで見落とす連動の仕組み

個人事業主 法人成り 役員報酬 公開 2026年8月26日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約5,900字

報酬を決めるときに保険料も見たい方へ

役員報酬をいくらにするか考えていると、社会保険料の話が必ず出てきます。報酬を上げれば保険料も上がる。この連動をどう扱えばいいのか。そこを確かめたい方に向けたページです。

税だけを見て報酬を決めると、必ず失敗します。 社会保険料は会社負担と本人負担の両方があり、合計すると相当な額になるからです。

連動の仕組みと、試算の仕方を並べます。会社設立の前に読んでおいてください。

標準報酬月額という仕組み

標準報酬月額という仕組みを表したイラスト
等級に当てはめて、保険料が決まります

社会保険料は、役員報酬の額をそのまま使って計算するのではありません。標準報酬月額という区分に当てはめて計算します。

報酬の額を一定の幅で区切り、等級として整理したものです。同じ等級に入る報酬なら、保険料も同じになります。

だから、報酬を少し上げても等級が変わらなければ保険料は変わりません。逆に、等級の境目をまたぐと保険料が上がります。

この仕組みを知っていると、報酬を決めるときに調整の余地が見えます。等級の境目の少し手前に置く、という考え方です。

ただし、そのために生活費を削るのは本末転倒です。あくまで、同じくらいの額なら等級を意識するという程度に考えてください。

等級の幅は、報酬が低いところでは細かく、高いところでは粗くなっています。だから、報酬が低い帯では少しの違いで等級が変わり、高い帯では多少動かしても同じ等級のままということが起こります。

標準報酬月額には上限と下限があります。報酬が非常に高い場合は、それ以上は保険料が増えない仕組みです。

個人事業主のときの国民健康保険は、前年の所得をもとに市区町村ごとの計算方法で決まっていました。仕組みがまったく違います。

会社設立をすると、この標準報酬月額の考え方に切り替わります。

個人事業主から法人成りをすると、この等級という考え方に初めて触れることになります。会社設立の前に一度、保険料額表を眺めておくと感覚がつかめます。

保険料額表を見れば、どの等級にいくらの保険料がかかるかが分かります。

出典厚生年金保険の保険料 (日本年金機構/2026年8月26日確認)

会社負担と本人負担

会社負担と本人負担を表したイラスト
折半でも、出どころは同じです

厚生年金保険料と健康保険料は、会社と本人で折半します。給与明細に載るのは本人負担分だけです。

しかし、一人社長の会社では会社負担分も同じ事業から出ていきます。折半という言葉に安心せず、合計で見てください。

加えて、子ども・子育て拠出金があります。これは事業主が全額を負担するものです。

つまり、役員報酬を月30万円に置いた場合、事業から出ていく社会保険料の総額は、本人負担分の倍近くになります。

法人成りの試算でいちばん多い間違いが、この会社負担を数え忘れることです。本人負担だけで比べると、会社設立が実際より有利に見えます。

個人事業主のときの国民健康保険料と国民年金保険料は、全額が本人負担でした。だから、比べるときは法人側も総額で見るのが筋です。

厚生年金保険料率は全国一律ですが、健康保険料率は都道府県ごとに違います。事業所の所在地によって負担が変わるので、試算には自分の都道府県の料率を使ってください。

報酬を上げると、この総額が比例して増えます。税で得た分が保険料で消えることがあるのは、このためです。

会社設立の前に、想定する報酬額での総額を計算してみてください。

法人成りの試算をするときは、個人事業主のときの国民健康保険料と国民年金保険料の合計を、会社設立後の社会保険料の全額と比べてください。片方だけを見ると比較になりません。

保険料額表には全額と折半額の両方が載っているので、全額のほうを見てください。

出典厚生年金保険の保険料 (日本年金機構/2026年8月26日確認)

報酬を上げたときに何が起きるか

報酬を上げたときに何が起きるかを表したイラスト
差引きで見ないと、答えが出ません

役員報酬を上げると、いくつかのことが同時に起きます。整理しておきます。

まず、会社の利益が減ります。報酬は会社の費用なので、その分だけ法人税が減ります。

次に、個人の所得が増えます。所得税と住民税が増えます。ただし給与所得控除があるので、増え方は緩やかです。

そして、社会保険料が増えます。会社負担と本人負担の両方です。ここがいちばん効いてきます。

役員報酬を変えると、負担の内訳はこう動く
ひとつ動かすと、3つが同時に動きます

法人税が減る分より、所得税と社会保険料が増える分のほうが大きくなることがあります。そうなると、報酬を上げたことで全体の負担が増える形になります。

だから、報酬を決めるときは差引きで見る必要があります。ひとつの税目だけを見ても答えは出ません。

個人事業主のときは、所得が増えれば所得税と住民税と国民健康保険料が増えるという単純な関係でした。会社設立をすると、変数が増えます。

個人事業主のときは、税と保険料が別々に決まっていました。会社設立をすると、報酬という一つの数字が両方に効いてきます。だから設計という言葉が使われます。

この複雑さが、法人成りの設計を難しくしている原因です。

出典役員報酬の相場はいくら?平均額や適正額を決めるポイントを解説 – 起業・開業お役立ち情報 – 弥生株式会社【公式】 (弥生/2026年8月26日確認)

算定基礎届で毎年見直される

算定基礎届で毎年見直されるを表したイラスト
毎年7月に、届出をします

標準報酬月額は、年に一度見直されます。算定基礎届という手続きです。

4月から6月に支払った報酬をもとに、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が決まります。届出は毎年7月です。

役員報酬を期首に改定する場合、4月から6月の報酬が新しい額になっていることが多くなります。3月決算の会社なら、まさにこの期間です。

つまり、報酬を上げるとその年の9月から保険料も上がる、という流れになります。

この時期のずれを知らないと、報酬を上げたのに保険料が変わらないと感じることがあります。実際には、9月から反映されます。

随時改定には、固定的賃金の変動があったこと、変動月から3か月の平均で等級が一定以上変わったことなどの要件があります。単に報酬を変えれば自動的に見直されるわけではありません。

報酬を大きく変えた場合は、随時改定という手続きもあります。一定の要件を満たすと、年の途中でも標準報酬月額が見直されます。

会社設立の直後は、被保険者資格取得届で届け出た報酬額がそのまま標準報酬月額になります。

個人事業主のときには、こうした届出はありませんでした。国民健康保険料は前年の所得で自動的に決まっていたからです。

個人事業主のときに市区町村の窓口とやりとりしていた方も、法人成りをすると相手が年金事務所に変わります。会社設立の直後に管轄を調べておいてください。

会社設立をすると、年金事務所とのやりとりが毎年発生します。

出典厚生年金保険の保険料 (日本年金機構/2026年8月26日確認)

報酬を低く抑えるという考え方

報酬を低く抑えるという考え方を表したイラスト
下げすぎると、別のところで損をします

社会保険料を抑えるために報酬を低く置く、という考え方があります。理屈としては成り立ちますが、いくつか注意点があります。

まず、生活費が足りなくなります。会社にお金が残っても、個人が自由に使えるわけではありません。生活費を切り詰めることになります。

次に、将来の年金額が減ります。厚生年金の保険料が少なければ、受け取る年金も少なくなります。長い目で見ると損になることもあります。

それから、傷病手当金などの給付も報酬額に連動します。働けなくなったときの備えが薄くなります。

さらに、極端に低い報酬は税務上も社会保険上も問題になることがあります。実態と合わない設定は避けてください。

報酬を低く置いた期間が長いと、その期間の分だけ将来の年金額に反映されます。数年なら影響は限られますが、10年20年と続けると差が出てきます。

それでも、会社設立の初年度に控えめに置くのは合理的です。事業の見通しが立っていない時期だからです。

翌期に事業が安定してきたら、生活と将来を考えて上げていく。この進め方が現実的です。

個人事業主のときの国民年金は定額でしたが、将来受け取る額も限られていました。厚生年金に入ることで増える部分もあります。

個人事業主のときに国民年金基金や確定拠出年金で備えていた方は、法人成り後の扱いも確かめてください。会社設立をして厚生年金に入ると、加入できる制度が変わることがあります。

負担と給付の両方を見て、いま払える額かどうかで決めてください。

出典法人化したときの役員報酬の決め方・ルールは?決定後の届出手続きも解説 | マネーフォワード クラウド会社設立 (マネーフォワード/2026年8月26日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

無料で相談してみる

※ 当サイトは会計事務所SoVaの「士業伴走プラン」を紹介しています。同プランの設立サポートは freee会社設立 を利用する前提で、設立サポート手数料0円は顧問契約(月1.5万円〜)とあわせて依頼する場合の条件です。当サイトは一般的な解説であり、法人成りの判断や個別の税務は税理士などの専門家にご相談ください。最新の料金・条件は必ず公式ページでご確認ください。

家族の扶養と第3号被保険者

家族の扶養と第3号被保険者を表したイラスト
世帯で計算すると、結論が変わることも

社会保険の話は、世帯で見ないと結論が出ません。配偶者や子どもの扱いが変わるからです。

個人事業主のときは、配偶者も国民年金の第1号被保険者として保険料を払っていたはずです。会社設立をして厚生年金に入ると、配偶者が第3号被保険者になれる場合があります。

第3号被保険者になれば、配偶者自身は保険料を払わなくてよくなります。世帯全体では負担が下がることになります。

健康保険についても同じです。国民健康保険では世帯の人数分の均等割がかかっていましたが、健康保険では被扶養者として保険料がかからない形になります。

子どもが多い世帯では、この差が大きくなります。法人成りで社会保険料が増えるように見えても、世帯で計算すると下がることがあります。

収入の基準は年額で判定されるのが基本です。配偶者がパートで働いている場合は、その年収も含めて確かめてください。

ただし、被扶養者になるには要件があります。収入の基準などがあるので、配偶者に一定以上の収入があれば対象外です。

会社設立の前に、家族の状況を含めて計算してください。個人だけで比べると、判断を誤ります。

個人事業主として家族を専従者にしていた場合は、法人成り後の扱いも一緒に考えることになります。

個人事業主として世帯の保険料をまとめて払ってきた方なら、その通知書がそのまま比較の材料になります。会社設立の前に手元に出しておいてください。

世帯全体の負担で比べるのが、正しい見方です。

出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月26日確認)

試算の仕方

試算の仕方を表したイラスト
30分で、自分の数字が出せます

役員報酬と社会保険料の試算は、それほど難しくありません。必要なのは保険料額表と、いくつかの決めごとです。

社会保険料を試算する手順
30分あれば、自分の数字が出ます

保険料額表は、協会けんぽのウェブサイトで都道府県ごとに公開されています。厚生年金保険料額表は日本年金機構のサイトにあります。

いまの負担と比べるには、国民健康保険料の通知書と、国民年金保険料の額を手元に出してください。

配偶者や子どもがいる場合は、その分も含めて比べます。世帯全体の負担で見るためです。

この計算をしておけば、報酬額を変えたときにどう動くかも見えます。3通りくらい置いて比べてください。

保険料率は毎年見直されるので、試算はその年度の表で行ってください。

法人成りの判断そのものを試算した方なら、この計算はその一部です。会社設立の前に作った試算に、保険料の欄を足すだけで済みます。

個人事業主として数字を扱ってきた方なら、この程度の計算は問題なくできるはずです。

出典法人化したときの役員報酬の決め方・ルールは?決定後の届出手続きも解説 | マネーフォワード クラウド会社設立 (マネーフォワード/2026年8月26日確認)

報酬を決めたあとの流れ

報酬を決めたあとの流れを表したイラスト
届出のあとは、毎月の作業になります

役員報酬を決めたら、社会保険の手続きに入ります。会社設立の直後なら、被保険者資格取得届で報酬月額を届け出ます。

日本年金機構の案内によれば、新規適用届の提出時期は事実発生から5日以内です。資格取得届も同じ時期に出すことになります。

届け出た報酬額をもとに標準報酬月額が決まり、翌月から保険料の納入告知書が届きます。

納付は毎月です。口座振替にしておけば、納め忘れを防げます。会社設立の直後に手続きしておいてください。

給与計算では、報酬額から本人負担分の保険料と源泉所得税を差し引きます。会計ソフトの給与機能を使えば自動で計算できます。

そして、毎年7月に算定基礎届を出します。4月から6月の報酬をもとに、標準報酬月額が見直されます。

報酬を改定した場合は、随時改定の要件に当たるかも確かめてください。

個人事業主のときには、こうした毎月の作業はありませんでした。会社設立をすると、給与計算と納付が定期の仕事になります。

個人事業主のときは、こうした定期の作業がありませんでした。法人成りをすると毎月の締めができるので、かえって数字が把握しやすくなるという面もあります。

慣れれば毎月10分程度で済みます。

出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月26日確認)

まとめ|税だけで決めず、保険料と一緒に見る

まとめ|税だけで決めず、保険料と一緒に見るを表したイラスト
合計で見れば、判断できます

役員報酬と社会保険料は連動します。報酬を上げれば保険料も上がり、会社負担と本人負担の両方が増えます。

一人社長の会社では、会社負担も本人負担も同じ事業から出ていきます。折半という言葉に安心せず、合計で見てください。

  • 標準報酬月額報酬を等級に当てはめて計算します
  • 会社負担本人負担と同額。合計で見るのが正しい見方です
  • 算定基礎届毎年7月。4月から6月の報酬で決まります
  • 世帯で比較配偶者が第3号になれば、世帯では下がることも

報酬を低く抑えれば保険料は下がりますが、生活費が足りなくなり、将来の年金も減ります。極端な設定は避けてください。

試算は難しくありません。保険料額表を開いて、想定する報酬額の欄を見るだけです。30分あれば自分の数字が出ます。

会社設立の前に、いまの国民健康保険料の通知書と並べて比べてみてください。世帯によっては、思ったより負担が増えないこともあります。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月26日確認)

保険料額表を、実際に開いてみてください

協会けんぽの都道府県ごとの保険料額表と、厚生年金保険料額表。想定する役員報酬の額を探して、全額と折半額を確かめてください。事業から出ていくのは全額のほうです。

いまの国民健康保険料の通知書と、国民年金保険料の額を並べて比べてください。世帯の構成によっては、法人成りで負担が下がることもあります。

報酬額を3通り置いて、それぞれで計算してみてください。どこに置くと何が動くのかが分かれば、会社設立後の設計も決めやすくなります。

このページは役に立ちましたか。

押しても個人が特定される情報は送られません。数は同じ端末から一度だけ増えます。

運営者:サイト運営事務局

個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください

この記事のテーマで実際に検索して出てきたサイトを並べました。並び順に優劣の意味はありません。個人事業主の会社設立や法人成りの扱いは、書き手によって前提の置き方が違います。数字は必ず一次情報でも確かめてください。

あわせて読むと、判断がはっきりします