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従業員がいる個人事業主が法人成りするときの社会保険|手続きと負担の増え方

個人事業主 法人化 社会保険 公開 2026年8月25日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約6,326字

従業員を抱えて法人成りする方へ

従業員を何人か雇っている個人事業主が会社設立をすると、社会保険の扱いが変わります。自分ひとりの話ではなく、雇っている人全員の話になります。

負担も手続きも人数分だけ増えます。 一方で、従業員にとっては待遇が良くなる変化でもあります。両方の面を並べて確かめてください。

この記事では、適用の範囲、手続きの流れ、労働保険との関係、そして会社負担の見積もり方を順に見ていきます。

個人事業所と法人事業所で、適用の範囲が違う

個人事業所と法人事業所で、適用の範囲が違うを表したイラスト
人数と業種の縛りが、なくなります

個人事業主の事業所では、社会保険の適用が人数と業種で決まっていました。日本年金機構の案内では、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所が原則として適用対象で、農林水産業やサービス業の一部などは除かれます。

会社設立をすると、この前提が変わります。法人事業所はすべて適用事業所になるので、人数にかかわらず従業員も被保険者になります。事業主のみの場合も含まれます。

つまり、これまで社会保険に入れていなかった従業員が、法人成りをきっかけに加入することになります。従業員にとっては待遇が良くなる変化です。

一方で、会社の負担は確実に増えます。従業員一人ひとりについて会社負担分が発生するからです。人数が多いほど、この負担は重くなります。

すでに5人以上を雇っていて社会保険に加入している個人事業主なら、法人成りしても大きくは変わりません。事業所の形が個人から法人に変わるだけです。

逆に、4人以下で社会保険に入っていなかった場合は、会社設立をきっかけに新たに加入することになります。ここで負担の増え方が大きくなります。

自分がどちらなのかを、まず確かめてください。いま社会保険に加入しているかどうかで、法人成りの負担の増え方がまるで違います。

なお、令和4年10月からは、法律・会計にかかる業務を行う士業に該当する個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所も強制適用事業所になりました。

人を雇っている個人事業主にとって、法人成りは自分ひとりの決断ではなくなります。従業員の待遇が変わり、手続きの相手も増える。会社設立を考えはじめた時点で、そこまで視野に入れておいてください。

業種によって扱いが違うので、自分の事業がどう扱われているかを確かめてから会社設立の判断をしてください。

出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月26日確認)

パートやアルバイトの扱い

パートやアルバイトの扱いを表したイラスト
全員が対象になるわけではありません

従業員全員が被保険者になるわけではありません。短時間で働くパートやアルバイトについては、労働時間や賃金による判定があります。

一般には、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者になります。それ未満の場合は、別の要件で判定されます。

特定適用事業所に該当する場合は、短時間労働者についても一定の要件を満たせば被保険者になる仕組みがあります。従業員数によって扱いが変わるので、自分の事業所がどうなるかを確かめてください。

会社設立をして従業員数が増えていくと、この判定が変わることがあります。人を増やす計画があるなら、先に確かめておいてください。

従業員にとっては、被保険者になるかどうかで手取りも将来の年金も変わります。法人成りの前に、対象になる人には説明をしておくと混乱が少なくなります。

説明が足りないと、「手取りが減った」という不満につながります。会社設立をきっかけに待遇が変わるなら、その理由を伝えてください。

パートの方が扶養の範囲で働きたいと考えている場合、労働時間の調整を希望されることもあります。法人成りの前に希望を聞いておくと、あとで揉めません。

個人事業主として長く一緒に働いてきた人ほど、丁寧に伝える価値があります。

個人事業主のときからパートの方に来てもらっている場合、その働き方が長年の習慣で決まっていることがあります。会社設立を機に労働時間を書面で確かめておくと、判定もはっきりします。

判定に迷う場合は、年金事務所か社労士に確かめてください。

出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月26日確認)

手続きは人数分だけ増える

手続きは人数分だけ増えるを表したイラスト
人数分の書類を、事前にそろえます

会社設立をしたら、年金事務所へ新規適用の手続きをします。提出時期は事実発生から5日以内です。ここは一人社長の場合と変わりません。

違うのは、被保険者資格取得届を従業員一人ずつ出すことです。人数が多いほど書類も増えます。扶養家族がいる従業員については、被扶養者の届出も必要です。

従業員の基礎年金番号やマイナンバー、家族の情報を集める必要があるので、会社設立の前から準備を始めておいてください。当日になって集めようとすると間に合いません。

従業員がいる場合に集めておく情報
人数が多いほど、事前の準備が効きます

それから、個人事業主として社会保険の適用事業所だった場合は、その事業所の全喪の手続きも必要になります。法人としての新規適用と、個人事業所の廃止が対になります。

この2つの手続きの時期がずれると、従業員が無保険になる期間が生じるおそれがあります。会社設立の日程を組むときに、両方を並べて確認してください。

従業員から見れば、保険証が切り替わることになります。切替の期間に受診の予定がある人がいれば、事前に伝えておくと親切です。

手続きが多いので、人数が一定以上なら社労士に頼むことも検討してください。会社設立の手続きとあわせて依頼できる事務所もあります。

個人事業主として社会保険の適用を受けていた事業所であれば、法人成りは事業所の切替という形になります。従業員の記録が途切れないよう、新旧の手続きの日付をそろえてください。

自分でやる場合は、年金事務所に事前相談に行くと確実です。

出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月26日確認)

労働保険の手続きも別にある

労働保険の手続きも別にあるを表したイラスト
窓口が4か所になります

社会保険とは別に、労働保険の手続きもあります。労災保険と雇用保険で、窓口も書類も違います。

労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークが窓口です。個人事業主として人を雇っていれば、すでに手続きをしているはずです。

会社設立をすると、事業主が個人から法人に変わります。そのため、労働保険についても事業主の変更や新規の成立といった手続きが必要になります。

雇用保険については、従業員の被保険者番号は引き継がれます。ただし、事業所としての手続きは別に必要です。

この手続きを忘れると、従業員の雇用保険の記録が途切れることがあります。失業給付や育児休業給付に影響するので、確実に処理してください。

さらに、税務署への給与支払事務所等の届出もあります。国税庁の手続案内では、開設・移転・廃止の事実があった日から1か月以内とされています。個人側の廃止と法人側の開設の両方が必要です。

つまり、従業員がいる個人事業主が法人成りすると、年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク・税務署の4か所に手続きをすることになります。

一人社長の会社設立と比べると、事務の量がまったく違います。ここを見込んでおかないと、本業が止まります。

個人事業主として一人で全部の手続きをやってきた方でも、法人成りのときだけは人手を借りるという判断があります。会社設立の直後は本業も動いているので、手続きに割ける時間は限られます。

人数が多いなら、専門家に頼むほうが結果的に安く済むことがあります。

出典A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 (国税庁/2026年8月26日確認)

会社負担はどれくらい増えるか

会社負担はどれくらい増えるかを表したイラスト
人数分だけ、固定費が上がります

従業員がいる場合の会社負担を見積もってみます。基本の考え方は、一人ひとりの標準報酬月額に保険料率をかけて、会社負担分を合計するというものです。

厚生年金保険料率は全国一律で定められています。健康保険料率は都道府県ごとに定められていて、協会けんぽの場合は毎年度改定されます。これに子ども・子育て拠出金が加わります。

たとえば月給25万円の従業員が3人いれば、会社負担だけで年間に相当な額になります。役員報酬の分と合わせると、法人成りの固定費が一段重くなります。

これまで社会保険に加入していなかった個人事業主にとっては、この負担がまるごと新規に発生します。会社設立の判断で、いちばん大きな変数になることもあります。

一方で、従業員にとっては待遇の改善です。採用や定着の面ではプラスに働きます。求人を出したときの反応も変わります。

つまり、この負担は「コスト」であると同時に「人に対する投資」でもあります。どちらの面を重く見るかは、事業の段階によります。

見積もりを立てるときは、いまの給与総額に対して会社負担が何割かかるかを概算するのが早道です。おおよその割合を掛ければ、規模感がつかめます。

その額を毎年の固定費に足したうえで、法人成りの効果と比べてください。従業員が多いほど、この比較は厳しくなります。

個人事業主のままで人を増やしていく道もありますが、人数が増えるほど社会保険の適用に近づきます。いずれ加入するなら、会社設立のタイミングで一度に整えるほうが手間は少なくて済みます。

会社設立の前に、必ずこの計算をしておいてください。

出典厚生年金保険の保険料 (日本年金機構/2026年8月26日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

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従業員への説明をどうするか

従業員への説明をどうするかを表したイラスト
手取りが変わる人には、必ず説明を

社会保険に新たに加入することになる従業員は、給与から保険料が引かれるようになります。つまり、手取りが減ります。

この変化を説明せずに法人成りをすると、従業員から不満が出ます。「会社にしたら給料が減った」と受け取られてしまいます。

説明すべきことは3つです。なぜ加入することになるのか、手取りがどう変わるのか、その代わりに何が良くなるのか。

加入する理由は簡単で、法人はすべて適用事業所になるからです。会社の判断ではなく制度の仕組みだという点を伝えてください。

手取りの変化は、一人ひとり計算して示すのがいちばん納得されます。保険料額表を使えば計算できます。

良くなる点は、将来の年金が増えること、傷病手当金などの給付が受けられること、会社が半分を負担すること。国民健康保険を全額自分で払っていた人にとっては、実質的な負担が下がることもあります。

扶養に入っている家族がいる場合、健康保険では被扶養者として保険料がかからない形になります。世帯で見ると負担が下がる人もいます。

会社設立の前に、個別に話す時間を取ってください。人数が少ないうちのほうが、丁寧に伝えられます。

説明の場では、個人事業主のときと法人成り後で何が変わり何が変わらないかを、紙にして配るとよく伝わります。口頭だけだと、聞いた人ごとに理解がずれます。

個人事業主として一緒にやってきた人たちなら、理由を伝えれば理解してもらえるはずです。

出典事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき (日本年金機構/2026年8月26日確認)

会社設立の日程に、社会保険を組み込む

会社設立の日程に、社会保険を組み込むを表したイラスト
1か月前から準備を始めます

従業員がいる場合の会社設立は、日程の組み方がより重要になります。手続きが多く、期限も短いからです。

起点になるのは登記の完了です。登記簿謄本が取れないと、年金事務所の手続きが進みません。そして新規適用届の提出期限は事実発生から5日以内です。

従業員がいる場合の会社設立の日程
人数が多いほど、前倒しの準備が効きます

従業員の情報集めは、会社設立の1か月前から始めておくと余裕があります。基礎年金番号や扶養家族の情報は、本人に聞かないと分かりません。

給与の締め日と支払日をどうするかも決めておいてください。個人事業主のときの締め日をそのまま引き継ぐのか、法人成りを機に変えるのか。

変える場合は、従業員への説明が必要です。給与の支払日が動くと生活に影響するので、慎重に決めてください。

保険証の切替時期も伝えておいてください。切替の間に受診が必要な人がいれば、対応を確認しておきます。

会社設立の日程は、こうした従業員への影響まで含めて組むことになります。一人社長のときより時間がかかると考えてください。

出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月26日確認)

人を雇っているからこそ、法人成りの意味もある

人を雇っているからこそ、法人成りの意味もあるを表したイラスト
人を増やすなら、前向きな選択になります

ここまで負担と手続きの話が続きましたが、人を雇っているからこそ会社設立に意味があるという面もあります。

社会保険に入れることは、求人を出したときの反応を変えます。求職者にとって、厚生年金に入れるかどうかは待遇の重要な要素だからです。

定着にも効きます。長く働くことを考える人にとって、事業の継続性は判断材料になります。法人であれば代表者が代わっても事業が続く形です。

個人事業主のもとで働くことに不安を感じる人は一定数います。それは待遇の問題ではなく仕組みの問題なので、会社設立をすることで解消できます。

さらに、人を雇うことで課税所得は下がります。人件費が経費になるからです。法人成りの税の効果は小さくなりますが、事業の規模は大きくなります。

つまり、従業員がいる個人事業主にとっての会社設立は、税の話というより体制の話になります。人を増やしていく前提なら、どこかの段階で法人成りを考えることになります。

負担の増え方を見積もったうえで、それが事業の成長につながるかを考えてください。単なるコスト増なのか、投資なのか。

この判断は、事業の見通しによって変わります。人を増やす計画があるなら、会社設立は前向きな選択になります。

逆に、当面いまの規模を保つつもりなら、負担だけが増えることになります。

出典個人事業と法人のどちらがよいか (中小機構/2026年8月26日確認)

まとめ|人数分の準備を、1か月前から

まとめ|人数分の準備を、1か月前からを表したイラスト
準備を早く始めれば、無理なく進みます

従業員がいる個人事業主が会社設立をすると、社会保険の適用が人数と業種による判定から一律の適用に変わります。これまで加入していなかった従業員も被保険者になります。

手続きは年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク・税務署の4か所です。新規適用届の提出期限は事実発生から5日以内で、人数分の資格取得届も必要になります。

  • 適用の範囲法人はすべて適用事業所。人数の縛りがなくなります
  • 手続き窓口は4か所。人数分の書類を1か月前から準備
  • 負担従業員一人ひとりについて会社負担が発生します
  • 説明手取りが変わる人には、理由と代わりに得るものを伝える

負担は確実に増えますが、従業員にとっては待遇の改善です。採用と定着に効いてくるので、人を増やす前提なら前向きな選択になります。

会社設立の日程は、従業員への影響まで含めて組んでください。一人社長のときより時間がかかります。

人数が一定以上なら、社労士に頼むことも検討してください。手続きの量を考えると、結果的に安く済むことがあります。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月26日確認)

従業員の情報集めを、いまから始めてください

基礎年金番号、扶養家族の情報、所定労働時間。会社設立の手続きに必要な情報は、本人に聞かないと分かりません。法人成りの1か月前から集めはじめてください。

社会保険に新たに加入する従業員には、手取りが変わることを先に伝えてください。理由と、代わりに得られるものをあわせて説明すれば、理解してもらえます。

手続きの窓口は4か所です。人数が一定以上なら、社労士に頼むことも検討してください。本業を止めずに進めるほうが、結果的に得になります。

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個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

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