許認可は法人成りで引き継げない|会社設立の前に、営業が止まらない順番を決める
許可が要る商売をしている方へ
飲食店、建設業、古物商、酒販、運送。許可や免許を受けて事業をしている個人事業主が、これから会社設立をしようとしているときのためのページです。
許可は、原則として法人に引き継げません。 個人と法人は別人格だからです。法人名義で取り直すことになります。
問題は、その間に営業できない期間が生まれかねないことです。会社設立の日程を組む前に、ここだけは確かめてください。
許可は「人」に対して出ている

最初に理屈を押さえます。許認可は、事業そのものではなく事業をする人に対して出ています。
個人事業主として許可を受けたなら、その許可はその個人に紐づいています。会社設立をして法人を作っても、法人は別の人格なので、許可はついてきません。
屋号が同じでも、店の場所が同じでも、やっている仕事がまったく変わらなくても関係ありません。名義が変われば、許可の主体が変わったことになります。
だから、法人成りをしたら法人名義であらためて許可を取るのが原則です。多くの許認可がこの形になっています。
これを知らずに会社設立を済ませてしまうと、無許可営業の状態になりかねません。許可が要る事業で無許可は、業法違反です。
会社設立の準備をしている段階で、自分が持っている許可・免許・登録をすべて書き出してください。数が多い方ほど、抜けが出ます。
そのうえで、それぞれについて引き継げるのか、取り直しなのかを確かめます。制度によって扱いが違うからです。

書き出したら、ひとつずつ所管の窓口に確かめていきます。個人事業主として長く続けてきた方ほど、届出だけのものまで含めると数が出ます。
出典法人成りしたらやることリスト!手続きの仕方や必要書類も解説 | 会社設立の基礎知識 – 小谷野税理士法人 (小谷野税理士法人/2026年9月1日確認)
取り直しのあいだ、営業が止まる

実務でいちばん問題になるのが、この空白期間です。
法人名義で許可を申請しても、その日に下りるわけではありません。審査に時間がかかります。数週間から、業種によっては数か月。
その間、法人としては許可がありません。かといって、会社設立を済ませて事業を法人に移していれば、個人の許可で営業することもできません。
許可を受けた者の名義で営業する、というのが業法の建前です。法人の仕事を個人事業主の許可でやると、名義貸しに近い状態になります。
だから、順番が重要になります。会社設立の登記を先に済ませ、法人名義で許可を取り、下りてから事業を法人に移す。この順で進めれば止まりません。
逆に、事業を先に法人へ移してから許可を申請すると、下りるまでの間が空きます。売上が止まるだけでなく、業法違反の状態になります。
個人の許可は、法人の許可が下りるまで返納しないのが原則です。ただし、その間に法人の仕事を個人の許可でやってよいということではありません。所管の窓口に、どう扱えばよいかを事前に相談してください。
古物商のように、事前に警察署へ相談しておけば申請から取得までの期間の扱いを確かめられる制度もあります。黙って進めるのがいちばん危ない。
法人成りの日を決める前に、許可の審査にどれくらいかかるかを窓口で聞いておいてください。そこから逆算して登記の日を決めます。個人事業主として営業を止められない方ほど、ここは慎重に。
出典法人成りに伴う飲食店営業許可 – 行政書士法人STパートナーズ (行政書士法人STパートナーズ/2026年9月1日確認)
定款の事業目的に書いていないと、申請できない

会社設立の段階で先回りしておくことがあります。定款の事業目的です。
会社は原則として、定款に定めた目的の範囲内でしか事業をできません。許認可の申請でも、その事業が定款の目的に入っているかを見られます。
入っていなければ、申請を受け付けてもらえないことがあります。そうなると、定款を変更して目的を追加し、登記も直すことになります。
目的の変更登記には登録免許税がかかります。会社設立の直後にこれをやるのは、時間もお金も無駄です。
しかも、業種によっては書き方が細かく決まっています。事業の内容だけでなく、根拠になる法律の名前まで入れるよう求められることがあります。
だから、会社設立の定款を作る前に、所管の窓口や行政書士に「この目的の書き方で許可が取れるか」を確かめてください。定款認証の前なら、直すのは簡単です。
それから、将来やるかもしれない事業も入れておくという考え方があります。目的が多すぎると融資の審査で焦点がぼやけるという指摘もあるので、バランスの問題です。
個人事業主のときは、こんなことを気にする必要がありませんでした。個人事業主の開業届に事業の概要を書くだけで、それが許可の申請を妨げることはなかった。法人成りをすると、定款が事業の範囲を決めます。
会社設立をすると、定款という書面が事業の範囲を決めます。ここが許認可と結びついているという構造を、頭に入れてください。
出典定款の事業目的違反の罰則は?会社の目的の登記や定款変更手続きを解説 – 起業・開業お役立ち情報 – 弥生株式会社【公式】 (弥生株式会社/2026年9月1日確認)
許可の要件を、法人として満たし直せるか

取り直しといっても、申請すれば必ず下りるわけではありません。要件を法人として満たす必要があります。
多くの許認可には、人の要件と物の要件があります。人の要件は、資格を持った人を置くこと。物の要件は、施設や設備が基準を満たすこと。
個人事業主のときは、自分が資格者で、自分が事業主でした。法人成りをすると、その人がどういう立場で法人に関わるかが問われます。
たとえば建設業許可なら、経営業務の管理を適正にできる体制と、営業所ごとの専任技術者が要件になります。個人事業主としての経験年数を法人成りのあとどう評価するかは、制度の定めによります。
宅建業なら専任の宅地建物取引士、旅行業なら旅行業務取扱管理者。それぞれ配置の要件があります。自分ひとりで両方を兼ねられるかどうかも確かめてください。
欠格事由も見られます。法人の場合は役員全員が対象です。個人のときは自分だけを見ればよかったところが、家族を役員にすると範囲が広がります。
資本金の額や財産的基礎が要件になっている許認可もあります。会社設立のときに資本金をいくらにするかが、ここに効いてきます。
たとえば一般建設業では、財産的基礎の要件があります。会社設立の資本金を低く置きすぎると、この要件で引っかかることがあります。
だから、会社設立の設計そのものが許認可に縛られます。資本金、役員構成、本店の場所。どれも許可の要件から逆算して決めるべき項目です。
出典法人成り時の建設業許可|事業承継認可と新規申請 | 行政書士 植松悠一郎 事務所 (行政書士植松悠一郎事務所/2026年9月1日確認)
引き継げる制度もある——建設業と食品営業

原則は取り直しですが、例外があります。近年、承継の仕組みが整えられた分野があるからです。
建設業許可には、事業承継等の認可という制度があります。個人事業主から法人への事業の全部譲渡、いわゆる法人成りも対象に含まれます。
この制度では、あらかじめ認可を受けることで、建設業者としての地位を承継できます。空白期間を作らずに済むのが大きな利点です。
ただし、あくまで事前の認可です。会社設立をして事業を移したあとで申請しても間に合いません。効力発生日の前までに認可を受ける必要があります。
食品衛生法にもとづく営業許可にも、地位承継届という仕組みがあります。相続、法人の合併・分割に加えて、営業の譲渡による承継も対象になりました。
渋谷区のページには、事業譲渡による地位承継について、令和5年12月13日以降に事業譲渡が行われた場合が対象と書かれています。それ以前は、廃業届と新規申請という形でした。
必要な書類は、地位承継届、営業許可書の原本、営業の譲渡が行われたことを証する書類、そして譲受人が法人の場合は登記事項証明書です。営業許可の場合には保健所による調査もあります。
つまり、個人事業主が飲食店で法人成りをする場合は以前より楽になっています。古い解説記事には「飲食店は取り直し」と書かれているものが残っているので、必ず自分の自治体の窓口で確かめてください。

どちらに当たるかで、会社設立の日程の組み方が変わります。
出典建設業許可は承継できる!法人成り・相続など事例ごとに手続き方法を解説 – 建設業許可の手続・流れ・申請書類を解説・無料相談|VSG行政書士法人 (VSG行政書士法人/2026年9月1日確認)
会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます
個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。
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取り直しになる代表例——古物商と酒販

取り直しになる例を2つ見ておきます。どちらも個人事業主に多い許認可で、法人成りのときに必ず出てくるものです。
まず古物商許可です。古物営業法にもとづく許可で、営業所の所在地を管轄する警察署を窓口として、都道府県公安委員会が出します。
個人の許可を法人に切り替える手続きはありません。法人として新たに許可を取り、個人の許可証は返納します。
申請に必要な書類は、個人と法人で違います。法人の場合は定款の謄本と登記事項証明書が要り、役員それぞれについて略歴書、住民票の写し、誓約書を出します。
だから、会社設立の登記が終わって登記事項証明書が取れないと、申請そのものができません。ここでも順番が決まります。
次に酒類販売業免許です。こちらは税務署が窓口です。個人事業主として免許を受けていた場合、法人成りでは免許の取消しの申請と新規の免許申請を同時に進める形になります。個人事業主のときの実績が、そのまま引き継がれるわけではありません。
酒類販売業は、免許を受けた者の名義で行う必要があります。会社設立をした法人が仕入れた酒を、個人名義の免許で売ることはできません。
免許の要件には、人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需給調整要件があります。法人として、これらを満たし直すことになります。
どちらも、事前に窓口へ相談してから動くのが確実です。会社設立の日程と、申請のタイミングをすり合わせてください。
出典古物商許可申請 – 警視庁ホームページ (警視庁/2026年9月1日確認)
会社設立の日程を、許可から逆算する

ここまでを踏まえて、日程の組み方を整理します。
許可が要る事業では、会社設立の日を先に決めてはいけません。許可の手続きから逆算して決めます。
承継の制度が使える業種なら、事前認可を受けるまでの期間を見込みます。建設業の事業承継等の認可は、効力発生日の前に受けている必要があるので、会社設立の登記から事業移管までの間に余裕を作ります。
取り直しになる業種なら、法人設立の登記が終わってから申請し、許可が下りるまでの期間を見込みます。その間は個人で営業を続ける形になります。
つまり、どちらの場合も会社設立の登記が起点になります。登記事項証明書がないと、多くの申請ができないからです。
そのうえで、税務署への届出や社会保険の手続きは登記から1か月から2か月の期限があります。許可の手続きと並行して進めることになります。
会社設立の直後がいちばん忙しいのは、このためです。登記が終わってから、複数の窓口へ同時に動くことになります。

この順番を守れば、営業が止まることはありません。
出典【建設業許可の承継認可】個人事業主が法人成りする時に許可を引き継ぐ方法 (行政書士事務所/2026年9月1日確認)
許可番号が変われば、周りの書類も直る

許可が新しくなると、その番号を使っている書類も直すことになります。
店舗に掲示している許可証や標識。建設業なら建設業の許可票、宅建業なら業者票のように、掲示が義務づけられているものがあります。名義が変われば、掲示物も差し替えます。
取引先との契約書に許可番号を書いている場合、その契約も法人名義に切り替えることになります。許可の取り直しと契約の名義変更は、セットで動きます。
ホームページやパンフレットに許可番号を載せている場合も同じです。古い番号のまま残っていると、実態と合いません。
それから、補助金や融資の申請で許可の写しを出していた場合。事業主体が変われば、そちらにも報告が要ることがあります。
請求書や領収書の記載も変わります。適格請求書発行事業者の登録番号も、法人として取り直した番号になります。
会社設立の直後は、こうした表示の切り替えが山ほど出てきます。許可の取り直しは、その中でも影響範囲が広いほうです。
個人事業主のときに作った印刷物や看板は、法人成りを機に一度全部見直すつもりでいてください。
出典法人成りしたらやることリスト!手続きの仕方や必要書類も解説 | 会社設立の基礎知識 – 小谷野税理士法人 (小谷野税理士法人/2026年9月1日確認)
まとめ|先に窓口へ、それから登記

許認可は原則として法人に引き継げません。個人事業主と法人は別人格なので、法人成りをしたら法人名義で取り直すのが基本です。
- 原則取り直し。古物商、酒類販売業免許などがこれに当たります
- 例外建設業許可の事業承継等の認可、食品衛生法の地位承継届など
- 定款事業目的に書いていないと申請できないことがあります。会社設立の前に確かめます
- 順番登記 → 許可の申請 → 許可が下りる → 事業を法人へ移す
いちばん怖いのは、許可のない期間ができることです。事業を先に法人へ移してから申請すると、そこが空きます。会社設立の日程は許可から逆算してください。
要件も見直しになります。資本金の額、役員構成、資格者の配置。会社設立の設計そのものが許認可に縛られる業種があります。
制度は動いています。飲食店の営業許可のように、以前は取り直しだったものが承継できるようになった例もあります。古い記事の記述をそのまま信じないでください。
ここに書いた内容は2026年9月時点で官庁や自治体のページを確かめたものです。扱いは業種と自治体によって異なります。動く前に、必ず所管の窓口か行政書士にご確認ください。
出典建設業許可の法人成り手続き|個人事業主から法人へ引き継ぐ方法・事前認可・注意点【東京都】 – 行政書士萩本昌史事務所ブログ (行政書士萩本昌史事務所/2026年9月1日確認)
会社設立の日を決める前に、窓口へ一本電話してください
自分の許可が承継できるのか、取り直しなのか。取り直しなら審査にどれくらいかかるのか。この2つが分かれば、会社設立の日程は組めます。
定款の事業目的も、許可の窓口に確かめてから作ってください。認証の前なら直すのは簡単ですが、あとからだと変更登記になります。
許可のない期間を作らないことが、いちばん大事です。判断に迷う部分は、業種に詳しい行政書士か所管の窓口にご相談ください。会社設立そのものの段取りについては、下のご案内もご覧ください。
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