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法人成りで消費税が免除される仕組み|個人事業主の課税売上高は引き継がれない

個人事業主 法人成り 消費税 公開 2026年8月25日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約6,003字

「法人成りで2年免税」の中身を確かめたい方へ

課税売上高が1,000万円を超えて、そろそろ消費税を納めることになる。そのタイミングで会社設立をすれば免税になると聞いた。そういう個人事業主の方に向けたページです。

結論から言うと、原則としてはそのとおりですが、条件がいくつもあります。 資本金、特定期間、インボイスの登録。どれかに当たれば免税にはなりません。

この記事では、仕組みと条件を国税庁の記載にあたりながら順に確かめます。期待だけで会社設立の時期を決めないための材料です。

消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高で決まる

消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高で決まるを表したイラスト
2年の時差が、設計の余地を生みます

消費税の話を理解するには、まず基準期間という考え方を押さえる必要があります。国税庁の説明では、基準期間は個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度です。

この基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば、その課税期間の消費税の納税義務は免除されます。これが免税事業者という状態です。

個人事業主として開業した年を1年目とすると、1年目と2年目には基準期間がありません。だから原則として最初の2年間は免税になります。3年目からは1年目の課税売上高で判定されます。

課税売上高が1,000万円を超えた年があれば、その2年後から納税義務が生じます。つまり、超えた時点ですぐに納めるわけではなく、2年の猶予があるということです。

個人事業主の消費税の判定(原則)
2年の時差があることが、法人成りの設計につながります

この2年の時差があるおかげで、会社設立の時期を工夫する余地が生まれます。ただし、特定期間による判定という別のルートもあるので、そちらも確かめる必要があります。

特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年1月1日から6月30日までの期間です。この期間の課税売上高が1,000万円を超え、かつ給与等の支払額も1,000万円を超えると、翌年から課税事業者になります。

個人事業主が法人成りを考えるときは、この2つの判定のどちらに当たるかを先に確かめてください。

出典No.6501 納税義務の免除 (国税庁/2026年8月26日確認)

会社設立をすると、基準期間がリセットされる

会社設立をすると、基準期間がリセットされるを表したイラスト
別人格だから、判定もやり直しになります

ここからが法人成りの話です。会社設立をすると、新しい法人が生まれます。この法人には過去がないので、基準期間もありません。

国税庁は、個人事業者が法人成りした場合の課税売上高の判定について、法人成り前の個人と法人成り後の法人は別々に判定されるという趣旨を示しています。つまり、個人事業主としての課税売上高は、原則として新しい法人には引き継がれません。

これが「法人成りで消費税が免除される」と言われる仕組みです。個人事業主として課税売上高が1,000万円を超えていても、会社設立をすればその法人は基準期間がない状態から始まります。

原則として法人の1期目と2期目は、基準期間がないため納税義務が生じません。個人事業主として免税でいられる期間を使い切ったあとに法人成りすれば、免税の期間を続けて取れる可能性があります。

ただし、これはあくまで原則です。例外がいくつもあります。 資本金の額、特定期間の判定、特定新規設立法人に当たるかどうか、そしてインボイスの登録。

会社設立の時期を消費税の免税だけを目的に決める人もいますが、条件を確かめずに動くと期待した効果が出ません。以下、条件を順に見ていきます。

それから、事業の実態が伴わない法人成りは、取引先や金融機関から見て不自然に映ります。免税を取りにいくためだけの会社設立は、勧められる進め方ではありません。

あくまで、事業として法人成りする理由があるうえで、その時期を工夫するという位置づけで考えてください。

出典個人事業者の法人成りの場合の課税売上高の判定 (国税庁/2026年8月26日確認)

条件1|資本金が1,000万円以上だと初年度から課税

条件1|資本金が1,000万円以上だと初年度から課税を表したイラスト
会社設立のときに決まる、動かせない条件です

最初の条件が資本金です。国税庁の説明では、新規設立法人でその事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上であるときは、基準期間がない事業年度でも納税義務が免除されません。

つまり、会社設立のときに資本金を1,000万円以上にすると、1期目から消費税を納めることになります。免税を意識するなら、資本金は1,000万円未満にしておく必要があります。

これは会社設立の時点で決めることなので、あとから調整できません。個人事業主として手元資金が厚い方が、そのまま全部を資本金に入れてしまうと、この条件に当たります。

資本金を抑えたうえで手元資金を会社に入れたい場合は、資本金と資本準備金に分ける、あるいは役員借入金として入れるといった方法があります。どの形をとるかで扱いが変わるので、会社設立の前に確かめてください。

ただし、許認可の要件に資本金の額が入っている業種もあります。建設業や人材派遣など、財産的基礎を求められる業種では、消費税より許認可の要件が優先されることもあります。

また、資本金が小さすぎると取引先や金融機関からの見え方に影響することもあります。免税だけを見て極端に小さくするのも考えものです。

実務では、1,000万円未満の範囲で事業に見合った額を置く、というのが一般的な落としどころになります。

法人成りを考えている個人事業主の方は、資本金をいくらにするかを消費税の判定とセットで決めてください。

出典No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき (国税庁/2026年8月26日確認)

条件2|特定期間の判定で2期目から課税になることがある

条件2|特定期間の判定で2期目から課税になることがあるを表したイラスト
売上と給与の両方を見る条件です

2つめの条件が特定期間による判定です。法人の場合、特定期間は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間です。

この特定期間の課税売上高が1,000万円を超え、かつ給与等の支払額も1,000万円を超えると、その事業年度から課税事業者になります。どちらか一方だけなら課税事業者にはなりません。

つまり、会社設立をして1期目の前半6か月で売上が伸びても、給与等の支払額が1,000万円以下であれば2期目も免税でいられる可能性があります。

一人社長の会社で役員報酬が月50万円なら、6か月で300万円です。この水準なら給与等の支払額の条件には当たりません。人を多く雇っている場合は、当たる可能性が出てきます。

個人事業主として従業員を抱えていた方が法人成りする場合は、この点を確かめてください。従業員をそのまま引き継げば、給与等の支払額が1,000万円を超えることもあります。

なお、判定に使う課税売上高は、給与等の支払額に代えることもできる仕組みになっています。詳しい判定は条件が細かいので、国税庁の資料か税理士に確かめてください。

会社設立の1期目を短く設定すると、特定期間の考え方が変わることもあります。決算期の置き方と合わせて設計する余地があるということです。

ここは自分だけで判断せず、専門家に確かめるほうが安全な部分です。

出典No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき (国税庁/2026年8月26日確認)

条件3|特定新規設立法人に当たる場合

条件3|特定新規設立法人に当たる場合を表したイラスト
個人の法人成りでは、当たることは少ない条件です

3つめの条件が特定新規設立法人です。他の者に支配されている新規設立法人で、その支配している者の課税売上高が5億円を超えるような場合には、基準期間がない事業年度でも納税義務が免除されません。

これは、大きな企業がグループ内に小さな法人を作って免税期間を使うことを防ぐための仕組みです。個人事業主がひとりで法人成りする場合には、通常は当たりません。

ただし、自分が他の会社の役員をしている場合や、家族が大きな事業をしている場合など、支配関係の判定に入る可能性があります。心当たりがあるなら確かめてください。

判定の基準は細かく、親族の範囲や議決権の割合まで見ることになります。会社設立の前に、自分の周辺に大きな事業体がないかを確かめておくと安心です。

多くの個人事業主にとっては関係のない条件ですが、条件として存在することは知っておいてください。

なお、この条件は制度改正の対象になりやすい部分でもあります。判定に使う金額の水準や範囲が見直されることがあるので、その時点の要件を確かめてください。

法人成りの相談を税理士にするとき、この点も確認事項に入れておくと漏れがありません。

自分ひとりの会社であれば、通常は資本金と特定期間の2つを押さえておけば足ります。

出典No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき (国税庁/2026年8月26日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

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※ 当サイトは会計事務所SoVaの「士業伴走プラン」を紹介しています。同プランの設立サポートは freee会社設立 を利用する前提で、設立サポート手数料0円は顧問契約(月1.5万円〜)とあわせて依頼する場合の条件です。当サイトは一般的な解説であり、法人成りの判断や個別の税務は税理士などの専門家にご相談ください。最新の料金・条件は必ず公式ページでご確認ください。

条件4|インボイス登録をすると免税の話は当てはまらない

条件4|インボイス登録をすると免税の話は当てはまらないを表したイラスト
登録するなら、免税の話は当てはまりません

4つめが、実務でいちばん効いてくる条件です。適格請求書発行事業者、いわゆるインボイスの登録をすると、免税かどうかにかかわらず課税事業者として申告することになります。

取引先が課税事業者ばかりの場合、インボイスを発行できないと相手が仕入税額控除を受けられません。取引条件に影響するので、登録せざるを得ないという個人事業主は多くいます。

その場合、会社設立をしても消費税の免税は使えません。法人としてインボイスの登録をして、課税事業者として申告することになります。

逆に、取引先が一般消費者中心の事業なら、インボイスの登録をしない選択肢があります。この場合は、法人成りの免税を活かせる余地が残ります。

自分がどちらなのかを先に確かめてください。売上のうち事業者向けの割合がどれくらいかで、答えが決まります。

なお、個人事業主として登録している番号は法人には引き継がれません。会社設立をしたら、法人として改めて登録申請が必要です。国税庁は新たに設立された法人の登録時期について特例を示しています。

取引先への通知も忘れないでください。番号が変わると請求書の様式や相手の経理処理に影響します。会社設立の日程が決まったら、早めに伝えるのが親切です。

インボイスの扱いは、法人成りの消費税を考えるうえでいちばん大きな分かれ道になります。

出典D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用) (国税庁/2026年8月26日確認)

条件を全部並べて、自分の場合を確かめる

条件を全部並べて、自分の場合を確かめるを表したイラスト
ひとつでも当たれば、免税にはなりません

ここまでの条件を一覧にします。会社設立をして消費税の免税を使えるのは、これらの条件をすべて外れている場合です。

法人成りで免税になるかの確認
全部外れて、初めて免税が使えます

この確認をせずに「法人成りすれば2年免税」と思って会社設立をすると、期待が外れることがあります。とくにインボイスの登録が避けられない事業では、免税の話は最初から成り立ちません。

逆に、条件を外れているなら、法人成りの時期を工夫する意味が出てきます。個人事業主として免税でいられる期間を使い切ったあとに会社設立をすれば、免税の期間を続けて取れる可能性があります。

その場合、決算期の置き方も効いてきます。第1期を最大限長く取れば、免税でいられる期間も長くなります。設立月の前月を決算月にするのが基本です。

ただし、決算期は繁忙期との関係でも決めるものです。免税の期間だけを見て決めると、毎年の決算作業がつらくなります。

会社設立の時期と決算期は、消費税と繁忙期の両方を見て決めてください。

出典No.6501 納税義務の免除 (国税庁/2026年8月26日確認)

免税でいることが常に得とは限らない

免税でいることが常に得とは限らないを表したイラスト
免税が常に有利、とは限りません

ここまで免税を取る前提で書いてきましたが、免税事業者でいることが常に得とは限りません。

課税事業者であれば、仕入や経費にかかった消費税を、預かった消費税から差し引けます。設備投資が大きい年や、輸出が中心の事業では、差し引きで還付になることがあります。

免税事業者にはこの還付がありません。会社設立の初年度に大きな設備投資をする予定があるなら、あえて課税事業者を選ぶほうが有利になることもあります。

課税事業者になることを選ぶには、届出が必要です。期限があるので、会社設立の時期に合わせて検討してください。

それから、免税事業者だと取引先がインボイスを受け取れません。取引先が課税事業者中心なら、免税でいることが取引条件に響きます。

つまり、免税かどうかは有利不利の話であると同時に、取引の話でもあります。税だけで決めないという点は、法人成りの他の論点と同じです。

個人事業主として取引先の構成を把握している方なら、どちらが自分に合うかは判断できるはずです。

迷う場合は、設備投資の予定と取引先の構成を持って税理士に相談してください。

出典No.6501 納税義務の免除 (国税庁/2026年8月26日確認)

まとめ|原則は免税、ただし条件を全部確かめてから

まとめ|原則は免税、ただし条件を全部確かめてからを表したイラスト
条件を確かめてから、時期を決めます

会社設立をすると、新しい法人には基準期間がないため、原則として1期目は消費税が免税になります。個人事業主としての課税売上高は、原則として法人には引き継がれません。

ただし条件があります。資本金1,000万円以上なら初年度から課税、特定期間の判定に当たれば2期目から課税、特定新規設立法人に当たれば免除されず、インボイスの登録をすれば課税事業者として申告します。

  • 資本金1,000万円未満にする。会社設立のときに決まります
  • 特定期間設立から6か月の課税売上高と給与等の支払額を確かめる
  • 特定新規設立法人個人の法人成りでは当たることは少ない条件
  • インボイス登録するなら免税の話は当てはまりません

これらを確かめずに「法人成りすれば2年免税」と考えて会社設立の時期を決めると、期待が外れます。とくにインボイスの登録が避けられない事業では、最初から成り立たない話です。

条件を外れているなら、会社設立の時期と決算期の置き方で免税の期間を長く取れます。ただし、繁忙期との関係も見て決めてください。

そして、免税でいることが常に得とは限りません。設備投資が大きい年や、取引先が課税事業者中心の場合は、あえて課税事業者になる選択もあります。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月26日確認)

4つの条件を、自分の場合で確かめてみてください

資本金、特定期間、特定新規設立法人、インボイスの登録。この4つを自分の場合で確かめてください。ひとつでも当たれば、会社設立をしても消費税は免税になりません。

とくにインボイスの登録は、取引先の構成で決まります。事業者向けの売上が多い個人事業主なら、免税の話は最初から成り立たないかもしれません。

判定は条件が細かいので、会社設立の時期を決める前に税理士に確かめてください。あとから気づくと、時期を選び直せません。

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個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

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