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株式会社で法人成りするときに決めること|個人事業主の会社設立と機関設計

個人事業主 会社設立 株式会社 合同会社 公開 2026年8月26日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約6,008字

株式会社で会社設立をすると決めた方へ

対外的な見え方や将来の選択肢を考えて、株式会社を選んだ。では、具体的に何を決めればいいのか。そこで手が止まる個人事業主の方に向けたページです。

ひとりで法人成りするなら、決めることはそれほど多くありません。 取締役1名の一番簡素な形で足ります。

それでも、いくつか選択肢のある項目があります。あとから変えると手続きが要るので、会社設立の前に決めておいてください。

ひとりなら、一番簡素な形で足りる

ひとりなら、一番簡素な形で足りるを表したイラスト
取締役1名で、株式会社は作れます

株式会社と聞くと、取締役会や監査役といった仕組みを思い浮かべるかもしれません。しかし、ひとりで会社設立をする場合、そこまでの機関は要りません。

取締役1名だけで株式会社は設立できます。取締役会を置く必要も、監査役を置く必要もありません。

法務局は、取締役会を設置しない会社の発起設立についての申請書様式を公開しています。個人事業主がひとりで法人成りする場合、この型に当てはまります。

取締役が1名なら、その人が自動的に代表取締役になります。別に代表を選ぶ手続きは要りません。

監査役を置くかどうかも選べますが、ひとりの会社で置くことはまずありません。置けばその人にも任期があり、登記も増えます。

将来、人が増えて取締役を複数にすることもできます。その時点で変更登記をすれば足ります。会社設立の時点で先の形まで決める必要はありません。

家族を取締役に入れるかどうかも、会社設立のときに決める項目のひとつです。役員報酬を出して所得を分散する形をとるなら、入れることになります。

ただし、実態のない役員に報酬を出すことは認められません。職務の実態があるかどうかを確かめてください。

個人事業主として一人でやってきた方なら、まず取締役1名で会社設立をするのが素直です。

個人事業主が法人成りをするとき、機関設計という言葉に身構える必要はありません。会社設立の時点で人がひとりなら、選べる形も限られているからです。難しく見えるのは、大きな会社まで含めた制度を一度に説明されるからです。

以下、決める項目を順に見ていきます。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月26日確認)

取締役の任期をどうするか

取締役の任期をどうするかを表したイラスト
ひとりなら10年にしておくのが実務的です

株式会社の取締役には任期があります。原則は2年ですが、株式に譲渡制限を設けている会社では、定款で最長10年まで伸ばせます。

任期が満了すると、重任の登記が必要になります。同じ人が続けるだけでも、登記をしなければなりません。

この登記には登録免許税がかかります。国税庁の税額表によれば、役員変更の登記は申請1件につき3万円で、資本金の額が1億円以下の会社については1万円とされています。

任期を2年にすれば2年ごと、10年にすれば10年ごとに登記が発生します。会社設立のときに任期を長くしておけば、この手間と費用を減らせます。

だから、ひとりで法人成りする場合は10年にしておくのが実務的です。人が増える予定がないなら、短くする理由がありません。

ただし、複数人で会社設立をする場合は考えものです。任期が長いと、役員を交代させたいときに手続きが重くなります。

登記を放置したまま長期間が過ぎると、みなし解散の対象になることもあります。会社が勝手に解散扱いになるという事態です。

それから、任期満了の登記を忘れると過料の対象になることがあります。10年後のことなので、忘れやすいところです。

会社設立のときに、任期の満了日をカレンダーに書き込んでおいてください。個人事業主のときにはなかった管理です。

個人事業主のときは、こうした期限のある手続きは確定申告だけでした。会社設立をすると、数年単位で管理する予定が増えます。手帳やカレンダーに残す習慣をつけてください。

合同会社にはこの仕組みがないので、この点だけは株式会社のほうが手間になります。

出典No.7191 登録免許税の税額表 (国税庁/2026年8月26日確認)

株式の譲渡制限をつける

株式の譲渡制限をつけるを表したイラスト
小さな会社では、つけるのが標準です

株式に譲渡制限をつけるかどうかも、会社設立のときに決めます。譲渡制限とは、株式を譲渡するときに会社の承認が必要という定めです。

これをつけておけば、株主が勝手に第三者へ株式を売ることができなくなります。知らない人が株主として入ってくることを防げます。

個人事業主がひとりで法人成りする場合、自分が唯一の株主なので当面は関係ありません。しかし、将来を考えるとつけておくのが安全です。

そして、譲渡制限をつけることで取締役の任期を最長10年まで伸ばせます。この2つはセットで考えることになります。

小さな会社では、譲渡制限をつけるのが標準です。つけない理由がほとんどありません。

譲渡制限をつけた会社は、法律上は非公開会社と呼ばれます。機関設計の自由度も高くなり、取締役会や監査役を置かない選択ができます。

会社設立の実務では、この形が一番簡素で費用も抑えられます。法務局の様式もこの型のものが用意されています。

将来、外部から出資を受けるときには、譲渡制限があっても問題ありません。承認の手続きを踏めば譲渡できるからです。

譲渡制限をつけない会社は、公開会社と呼ばれます。個人事業主が会社設立をする段階で公開会社にする理由は、まずありません。

個人事業主が法人成りするときは、迷わずつけておいてください。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月26日確認)

資本金と株式の設計

資本金と株式の設計を表したイラスト
額と株数、両方を決めます

資本金の額を決めたら、それを何株に分けるかも決めます。株式会社では、出資に対して株式が発行されるからです。

たとえば資本金100万円を100株に分ければ、1株1万円になります。10株に分ければ1株10万円です。

ひとりで会社設立をする場合、この分け方に実務上の意味はほとんどありません。全部を自分が持つからです。

ただ、将来だれかに株式を譲る場面を考えると、細かく分けておくほうが融通が利きます。1株の価額が小さいほうが、一部だけ譲るといった調整がしやすくなります。

資本金の額そのものは、消費税の判定にも関わります。国税庁の説明では、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である新設法人は、基準期間がない事業年度でも納税義務が免除されません。

法人成りで免税期間を意識するなら、1,000万円未満にしておく必要があります。

それから、資本金の額は登録免許税の計算にも使われます。資本金が大きいほど登録免許税も増えます。

許認可の要件に資本金の額が入っている業種もあります。個人事業主として許認可を持っている方は、会社設立の前に要件を確かめてください。

個人事業主として手元にある資金のうち、どこまでを会社に入れるか。生活費まで会社に移してしまうと個人の側が回らなくなるので、そこも見て決めてください。

実務では、1,000万円未満の範囲で事業に見合った額を置くのが落としどころです。

出典資本金とは?会社設立時はいくらに設定すべき?最低金額や決め方、払込時期などを解説 (マネーフォワード/2026年8月26日確認)

定款の認証という手続き

定款の認証という手続きを表したイラスト
予約が必要なので、日程に見込みます

株式会社で会社設立をする場合、定款を公証人に認証してもらう必要があります。合同会社にはない手続きです。

日本公証人連合会の案内によれば、認証の手数料は資本金等の額に応じて区分されています。一定の要件を満たす場合には、より低い区分もあります。

公証役場には予約が必要です。混み具合によっては数日待つこともあるので、会社設立の日程を組むときに見込んでおいてください。

定款は電子で作ることもできます。電子定款にすれば、紙の定款に必要な収入印紙4万円がかかりません。

ただし、電子定款を作るには電子署名の環境が必要です。個人事業主が自分で用意するには手間がかかるので、専門家に頼むことが多い部分です。

認証を受けたあとで定款を変えるには、作り直して認証をやり直すことになります。会社設立の費用も時間も余計にかかります。

だから、定款を作る前に商号、事業目的、資本金、事業年度を確定させてください。

認証が終われば、あとは資本金の払込みと登記の申請です。ここから先は合同会社と同じ流れになります。

個人事業主が本業を止めずに会社設立を進める場合、公証役場へ行く時間も確保することになります。予約の取りやすさは地域によって違うので、早めに問い合わせてください。

法人成りの日程では、この認証の予約が一つの制約になります。

出典9-4 定款認証 (日本公証人連合会/2026年8月26日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

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決算公告の義務

決算公告の義務を表したイラスト
方法を定款で決めておきます

株式会社には、決算を公告する義務があります。合同会社にはない義務です。

公告の方法は定款で定めます。官報に載せる、日刊新聞紙に載せる、電子公告にする。この3つから選ぶのが一般的です。

官報に載せる場合、掲載料がかかります。掲載する内容によりますが、決算公告で数万円というのが目安です。これが毎年発生することになります。

電子公告にすれば、自社のウェブサイトに載せる形になります。掲載料はかかりませんが、一定の期間継続して掲載する必要があります。

実務では、決算公告をしていない小さな株式会社も多くあります。ただし義務としては存在するので、そこは理解しておいてください。

会社設立のときに公告の方法を定款で決めることになります。あとから変えるには定款変更と登記が必要です。

個人事業主から法人成りをする場合、この義務があることを知らずに会社設立をする方も少なくありません。

合同会社を選べばこの義務がないので、維持の手間という点では差が出ます。

個人事業主のときには、決算の内容を外に出す義務はありませんでした。会社設立をして株式会社にすると、この点でも立場が変わります。

株式会社を選ぶなら、この負担も込みで判断してください。

出典官報公告掲載料金 | 官報公告 | 全国官報販売協同組合 (全国官報販売協同組合/2026年8月26日確認)

設立時に決める項目の一覧

設立時に決める項目の一覧を表したイラスト
8項目が決まれば、定款が作れます

株式会社で会社設立をするときに決める項目を一覧にします。どれも定款に書く事項なので、登記の前に確定させてください。

株式会社の設立で決めること
この8項目が決まれば、定款が作れます

項目の数は多く見えますが、実際に悩むのは一部だけです。取締役の人数も任期も譲渡制限も、ひとりの会社なら選択の余地がほとんどありません。

ひとりで法人成りする場合、標準的な形は決まっています。取締役1名、任期10年、株式に譲渡制限あり、取締役会は置かない。

迷うとしたら、商号、事業目的、資本金、事業年度の4つです。ここは自分の事業に合わせて考える部分になります。

事業目的は、狭すぎると新しい事業を始めるたびに変更登記が必要になります。広すぎると何をする会社か伝わりません。個人事業主のときの事業を軸に、近い将来やりそうなことまで含めるのが落としどころです。

事業年度は、消費税の免税期間と繁忙期の両方を見て決めてください。設立月の前月を決算月にすれば第1期が最長になります。

個人事業主として使ってきた屋号を商号にするなら、商号の欄はすぐ埋まります。事業目的も、いまの事業を書けば足ります。

これらが決まれば、定款が作れます。会社設立の準備は、ここから動き出します。

出典商業・法人登記の申請書様式 (法務局/2026年8月26日確認)

設立後に増える手続き

設立後に増える手続きを表したイラスト
登記の管理が、新しく加わります

株式会社で会社設立をすると、設立後の手続きにも合同会社との差が出ます。

いちばん大きいのが役員の任期です。満了すれば重任の登記が必要で、登録免許税もかかります。任期を10年にしておいても、いずれは来ます。

登記を忘れると過料の対象になることがあります。10年後のことなので、管理の仕組みが要ります。

それから、重要な決定には株主総会が必要です。ひとりの会社でも議事録は作ることになります。

決算公告の義務もあります。方法を定款で定めていれば、それに従って公告することになります。

こうした手続きは、個人事業主のときには存在しませんでした。法人成りをすると、事業とは別のところで管理する仕事が増えます。

顧問税理士がいれば、決算と申告の時期は向こうから声がかかります。登記については司法書士に頼めば、任期の管理まで見てくれることもあります。

ただし、慣れれば負担は大きくありません。年に一度の決算と申告、数年に一度の登記。それだけです。

会社設立の直後に、こうした予定をカレンダーに書き込んでおいてください。

個人事業主として一人で回してきた方なら、この程度の管理は問題なくできるはずです。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月26日確認)

まとめ|ひとりなら、標準の形で足りる

まとめ|ひとりなら、標準の形で足りるを表したイラスト
標準の形で、十分に足ります

株式会社で会社設立をするとき、ひとりで法人成りするなら決めることはそれほど多くありません。取締役1名、任期10年、株式に譲渡制限あり。この標準の形で足ります。

定款に書く項目は8つ。商号、事業目的、本店所在地、資本金と株式数、事業年度、取締役の人数と任期、譲渡制限、公告の方法。

  • 任期10年にしておけば、登記の回数を減らせます
  • 譲渡制限小さな会社では標準。任期を伸ばす条件にもなります
  • 資本金1,000万円未満に。消費税の判定に関わります
  • 公告方法を定款で決めます。官報なら掲載料がかかります

合同会社との違いは、定款の認証があること、役員の任期があること、決算公告の義務があること。この3つが手間として効いてきます。

それでも株式会社を選ぶなら、対外的な見え方や将来の選択肢に理由があるはずです。その理由を持っていれば、手間は納得して引き受けられます。

器を決めたら、あとは手を動かすだけです。定款を作り、認証を受け、払い込み、登記を出す。手順そのものは決まっているので、迷う場面はほとんどありません。

個人事業主として続けてきた事業を、どの器に移すか。会社設立はその選択です。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月26日確認)

8項目を、紙に書き出してみてください

商号、事業目的、本店所在地、資本金と株式数、事業年度、取締役の人数と任期、譲渡制限、公告の方法。この8つが決まれば定款が作れます。会社設立の準備は、ここから動き出します。

ひとりで法人成りするなら、取締役1名・任期10年・譲渡制限あり。この標準の形で足ります。迷うのは商号と事業目的と事業年度くらいです。

任期の満了日は、会社設立のときにカレンダーへ書き込んでおいてください。10年後のことなので、忘れやすいところです。

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個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

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