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法人成りの手続きで順番を間違えるとどうなるか|個人事業主が避けたい7つの事故

個人事業主 法人成り 手続き 公開 2026年8月25日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約5,960字

手続きの順番に自信が持てない方へ

会社設立の手続きは、それぞれは難しくありません。事故が起きるのは、順番を間違えたときです。個人事業主が法人成りするときに実際に起こりやすい型を、7つ挙げます。

どれも、知っていれば避けられるものばかりです。 知らずにやってしまうと、事業が止まったり、余計な税負担が生じたりします。

自分に当てはまりそうなものがないか、確かめながら読んでみてください。

事故1|許認可の承継より先に廃業届を出す

事故1|許認可の承継より先に廃業届を出すを表したイラスト
許認可は、いちばん先に確かめます

いちばん危ないのがこれです。許認可が必要な事業をしている個人事業主が、法人成りのときに個人の廃業届を先に出してしまう。

個人の許可は、法人には自動で移りません。承継の制度がある業種もあれば、新規に取り直しになる業種もあります。どちらにしても、手続きが完了するまでは法人としての許可がない状態です。

その状態で個人の許可を手放すと、無許可の期間が生じるおそれがあります。業種によっては営業できなくなりますし、行政処分の対象になることもあります。

建設業、飲食業、古物商、産業廃棄物、運送業、人材派遣、宅地建物取引業。許認可がある事業は数多くあります。自分の事業が該当するかを確かめてください。

防ぎ方は簡単で、会社設立の前に所管の窓口へ相談することです。承継できるのか、取り直しなのか、どれくらい期間がかかるのか。この3つを聞けば、日程が組めます。

承継の制度がある業種でも、事前の認可が必要な場合があります。認可が下りる前に会社設立をして事業を始めてしまうと、それも問題になります。

税務署への廃業届は、許認可の手続きが済んでから出してください。国税庁の手続案内では提出時期はその年分の確定申告期限までとされているので、急ぐ必要はありません。

個人事業主として許可を持っている方は、この一点だけでも先に確かめてください。

個人事業主として何年も同じ許可で営業してきた方ほど、許可の存在を意識しなくなります。更新の時期にだけ思い出す、という状態になりがちです。会社設立を考えはじめたら、まず許可証を引っぱり出して条件を読み直してください。

法人成りの手続きで、事業が止まる可能性があるのはここだけです。

出典登記-商業・法人登記- (法務省/2026年8月26日確認)

事故2|国民健康保険の喪失手続きを忘れる

事故2|国民健康保険の喪失手続きを忘れるを表したイラスト
窓口が違うから、忘れやすい手続きです

会社設立をして健康保険に加入したのに、個人事業主としての国民健康保険の資格喪失手続きを忘れる。これもよくある事故です。

健康保険の手続きは年金事務所、国民健康保険は市区町村。窓口が違うので、片方だけやって満足してしまうことがあります。

放置すると、国民健康保険料の請求が続きます。あとから遡って精算されますが、その間の資金繰りには影響します。

逆に、先に国民健康保険を抜いてしまって、健康保険の手続きが遅れると無保険の期間が生じます。医療機関にかかったときに全額負担になります。

防ぎ方は、両方の手続きの日程を並べて確認することです。健康保険の資格取得を証明する書類を持って市区町村の窓口へ行く、という順番が基本になります。

扶養している家族がいる場合は、家族の分も忘れないでください。全員の切替が必要です。

法人成りの直後は法人側の手続きに気を取られますが、個人側の保険も同時に動いています。

会社設立の日程表に、市区町村の窓口も入れておいてください。

それから、国民年金についても第1号被保険者から第2号被保険者へ切り替わります。こちらは厚生年金の資格取得によって処理されるのが通常ですが、個人事業主として国民年金基金に入っていた場合は、その扱いも確かめてください。

個人事業主として長く国民健康保険を払ってきた方ほど、抜けるという発想が出にくくなります。

出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月26日確認)

事故3|青色申告の承認申請が遅れる

事故3|青色申告の承認申請が遅れるを表したイラスト
法人設立届出書と一緒に出すのが確実です

法人としての青色申告の承認申請を忘れる、あるいは遅れる。これも実際によくあります。

設立第1期については、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期末のいずれか早い日の前日までとされています。この「いずれか早い日」という条件が独特で、うっかりしやすいところです。

たとえば第1期が3か月しかない会社なら、期末のほうが早く来ます。設立から3か月あると思っていると、間に合いません。

申請が遅れると、その事業年度は白色申告になります。欠損金の繰越しができず、各種の特典も使えません。会社設立の初年度は赤字になりやすいので、この影響は小さくありません。

防ぎ方は、法人設立届出書と一緒に出してしまうことです。どちらも税務署に出すものなので、まとめて処理すれば忘れません。

個人事業主のときの青色申告の承認は、法人には引き継がれません。改めて申請が必要です。

それから、個人側の青色申告の取りやめ届出書も別に出します。こちらは取りやめようとする年分の確定申告期限までとされています。

法人側の申請と個人側の届出、両方あることを押さえておいてください。

個人事業主のときに青色申告特別控除を使ってきた方は、法人にも同じ制度があると思いがちです。法人の青色申告には特別控除という形の枠はなく、欠損金の繰越しなどが主な利点になります。中身が違う点も押さえておいてください。

会社設立の直後にまとめて出すのが、いちばん確実です。

出典No.5100 新設法人の届出書類 (国税庁/2026年8月26日確認)

事故4|売上の帰属が分からなくなる

事故4|売上の帰属が分からなくなるを表したイラスト
切替日を決めれば、迷いません

法人成りの前後で、どの取引が個人でどの取引が法人なのかが分からなくなる。これは経理の事故です。

原因は、切替日を決めていないことです。請求書を出すたびに「これはどっちだろう」と考えていると、必ずどこかで混ざります。

防ぎ方は、会社設立の日を境にすると決めてしまうことです。設立日より前の取引は個人、以後は法人。この線引きなら判断が一本になります。

ただし、月末締めの請求が多い事業では、締め日と設立日がずれることがあります。この場合、月の途中で分けて請求するか、締め日に合わせて設立日を決めるかのどちらかです。

仕掛かり中の仕事についても、どちらの売上にするかを決めておいてください。完成時点で判断するのか、着手時点で判断するのか。一貫していれば問題になりません。

入金先の切替も同じです。法人口座が開くまでは個人口座で受けることになりますが、その分をあとで法人に移す処理が必要になります。

混ざったまま決算を迎えると、税理士に整理してもらうことになります。手間も費用もかかるので、最初に決めておくほうが安く済みます。

取引先にも切替日を伝えておくと、相手の経理も処理しやすくなります。

経費の側も同じです。個人事業主として支払った経費と、会社設立後に法人が支払った経費。領収書の宛名がどちらになっているかで、計上先が変わります。切替の時期は宛名にも気をつけてください。

個人事業主としての最後の請求と、法人としての最初の請求。この2つが並ぶのは1回だけです。

出典No.6125 国内取引の納税義務者 (国税庁/2026年8月26日確認)

事故5|資産の引継ぎを何も決めずに使い続ける

事故5|資産の引継ぎを何も決めずに使い続けるを表したイラスト
一覧を作ってから、引継ぎ方を決めます

個人事業主のときに使っていた車、機械、パソコン、在庫。これらを何も決めずに会社設立後も使い続ける。これも事故の型です。

会社が個人の資産を使っているなら、売買なのか賃貸なのか現物出資なのか、どれかの形になっているはずです。何も決めていないと、この関係が宙に浮きます。

売買にするなら、価格を決めて売買契約を作り、個人側では譲渡所得の問題を確かめます。賃貸にするなら、賃料を決めて契約を作ります。

在庫については、国税庁は棚卸資産の自家消費や低額譲渡についての取扱いを示しています。個人から法人へ移すときの価格の決め方に関わる部分です。

何も決めずに使い続けると、決算のときに整理することになります。時間が経つほど、当時の状況を思い出せなくなります。

防ぎ方は、会社設立の前に個人名義の資産を一覧にしておくことです。何をどう引き継ぐかを決めてから登記をすれば、あとが楽になります。

金額が大きいものは、税理士に相談してから決めてください。引継ぎの方法によって、個人側と法人側の税負担が変わります。

法人成りの相談で時間がかかるのが、この資産の引継ぎです。

少額のものまで神経質になる必要はありません。ただ、車や機械のように金額が大きいもの、在庫のように数量があるものは、会社設立の前に扱いを決めておいてください。

個人事業主として長く続けてきた方ほど、資産の数も多くなります。

出典No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法 (国税庁/2026年8月26日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

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事故6|インボイスの登録番号を切り替えない

事故6|インボイスの登録番号を切り替えないを表したイラスト
設定を変えなければ、古い番号のままです

会社設立をしたあとも、個人事業主のときのインボイスの登録番号で請求書を出してしまう。これも実際に起こります。

登録番号は事業者ごとに付されるので、個人の番号が法人に引き継がれることはありません。法人として改めて登録申請をする必要があります。

番号を変えずに請求書を出すと、取引先が仕入税額控除を受けるときに問題になります。差し替えを求められることになるので、相手の経理に迷惑がかかります。

防ぎ方は、会計ソフトや請求書サービスの事業者情報を、会社設立の直後に切り替えることです。設定を変えずに発行すると、個人時代の情報が入ったままになります。

登録申請から通知が届くまでには時間がかかることがあります。会社設立の日程が決まったら、早めに申請してください。

国税庁は、新たに設立された法人の登録時期について特例を示しています。事業を開始した日の属する課税期間の末日までに一定の記載をした申請書を提出すれば、事業を開始した日から登録を受けたものとみなされる扱いです。

取引先への案内も忘れないでください。番号が変わることを伝えておかないと、相手が古い番号のまま処理してしまいます。

個人側の登録をどうするかも決めておいてください。事業を完全にたたむなら取消しの届出が必要です。

個人事業主としてインボイスの登録をしていない方は、法人としてどうするかを新たに決めることになります。取引先の構成を見て、登録するかどうかを判断してください。

法人成りの直後は、この切替を最優先で片づけてください。

出典D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用) (国税庁/2026年8月26日確認)

事故7|社会保険の届出を後回しにする

事故7|社会保険の届出を後回しにするを表したイラスト
事前準備で、間に合わせられます

年金事務所への新規適用届を後回しにする。これも起こりがちです。期限が事実発生から5日以内と短いためです。

届出が遅れても手続きはできますが、加入は会社設立の日に遡ります。つまり、保険料も遡って発生します。放置すればするほど、まとめて請求される額が大きくなります。

法人はすべて厚生年金保険・健康保険の適用事業所になります。事業主のみの場合も含まれるので、一人社長の会社でも避けられません。

「様子を見てから加入する」という進め方はとれません。加入指導を受けることもあります。

防ぎ方は、書類を事前に用意しておくことです。登記が完了してから記入を始めると間に合わないので、登記を申請した時点で準備してください。

添付書類として法人登記簿謄本が求められるので、証明書を取ってからの提出になります。証明書の取得を最優先にしておけば、5日以内に間に合います。

従業員がいる場合は、人数分の資格取得届も必要です。情報を集めるのに時間がかかるので、会社設立の1か月前から動いてください。

不安があれば、事前に年金事務所へ相談に行くと確実です。

個人事業主として社会保険と縁がなかった方ほど、この期限を軽く見てしまいます。

出典適用事業所と被保険者 (日本年金機構/2026年8月26日確認)

事故を防ぐ順番

事故を防ぐ順番を表したイラスト
動かせないものから、確かめます

ここまでの7つの事故は、確かめる順番を決めておけば防げます。原則は、動かせないものから先に確かめることです。

会社設立の前に確かめる順番
会社設立の前にやることばかりです

この一覧のうち、上の3つは会社設立の前に決めておくものです。あとから決めようとすると、判断が後追いになって事故につながります。

許認可はいちばん先です。ここが決まらないと、そもそも法人成りの日程が組めません。

資産の引継ぎと請求書の切替日は、登記の前に決めておいてください。決めてしまえば、あとは決めたとおりに動くだけです。

残りの4つは、会社設立の直後に片づけるものです。日程表に落として、順に処理してください。

個人事業主として本業を回しながらの作業になるので、優先順位をつけないと回りません。

外に出せるものは専門家に頼むという判断もあります。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月26日確認)

まとめ|知っていれば、どれも避けられる

まとめ|知っていれば、どれも避けられるを表したイラスト
順番を決めれば、事故は起きません

法人成りの手続きで起きる事故は、どれも知っていれば避けられるものばかりです。順番を間違えることが原因なので、確かめる順番を決めておけば防げます。

いちばん危ないのが許認可です。個人の廃業届を先に出してしまうと、無許可の期間が生じるおそれがあります。会社設立の前に所管の窓口へ相談してください。

  • 許認可承継の可否と期間を先に確かめる。廃業届はそのあと
  • 保険健康保険と国民健康保険、両方の日程を並べる
  • 青色申告法人設立届出書と一緒に出す。期限が独特です
  • 切替日会社設立の日を境にすると決めてしまう

資産の引継ぎ、インボイスの番号、社会保険の届出。どれも会社設立の前後で決めておくことがはっきりしています。

個人事業主として本業を回しながらの作業なので、頭の中だけで管理すると必ず漏れます。紙に落として、順に確かめてください。

そして、迷ったら動く前に確かめる。あとから直すより、先に聞くほうがずっと安く済みます。

出典税理士に関する情報 (国税庁/2026年8月26日確認)

許認可の有無だけは、いま確かめてください

自分の事業に許認可が必要かどうか。必要なら、法人に承継できるのか取り直しなのか。この2つは会社設立の日程を左右するので、いちばん先に所管の窓口へ聞いてください。

そのうえで、個人名義の資産の一覧と、請求書の切替日を決めてください。この3つが決まれば、法人成りの手続きで起きる事故はほとんど防げます。

残りは会社設立の直後に片づけるものです。日程表に落として、順に処理していってください。

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個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

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