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法人成りは戻すのに手間がかかる|会社をたたむ費用と、個人事業主に戻る道

個人事業主 法人化 デメリット 公開 2026年8月25日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約6,295字

「合わなかったら戻せばいい」と思っている方へ

会社設立をしてみて、うまくいかなかったら個人事業主に戻せばいい。そう考えている方に、戻すときに何が起きるかを先にお伝えしておきたくて書いた記事です。

結論から言うと、入るより出るほうが大変です。 会社設立は書類がそろえば数週間で終わりますが、会社をたたむには数か月と、それなりの費用がかかります。

だから法人成りするなと言いたいわけではありません。出口を知ったうえで入るほうが、判断が確かになるということです。

入るのは簡単、出るのは大変

入るのは簡単、出るのは大変を表したイラスト
入口と出口では、かかる手間が違います

会社設立の手続きは、書類がそろえば数週間で終わります。定款を作り、資本金を払い込み、登記を申請する。個人事業主が法人成りする場合も、この流れは同じです。

ところが、たたむほうは同じようにはいきません。株主総会で解散を決議し、解散と清算人選任の登記をし、官報に公告を出し、債権の申出期間を待ち、財産を整理して、清算結了の登記をする。ここまでで最低でも2か月以上かかります。

この非対称さは、会社という仕組みが取引の相手を守るように作られているからです。会社が勝手に消えると債権者が困るので、公告を出して申し出を待つ期間が設けられています。

個人事業主の廃業は、これに比べると驚くほど簡単です。税務署に届出を出せば終わります。会社設立をするということは、この身軽さを手放すということでもあります。

やめるときの手間|個人事業主と法人
入口の差より、出口の差のほうがはるかに大きくなります

会社設立を検討している個人事業主の方に、この非対称さを先に知っておいてほしいのは、判断の重みが変わるからです。「試しにやってみる」という気軽さでは踏み込めない、ということです。

なぜこの話を最初にするかというと、会社設立の記事のほとんどが入口だけを説明して終わるからです。手続きの流れ、費用、必要書類。そこまでは詳しく書かれていても、やめるときにどうなるかは書かれていません。個人事業主が法人成りを判断するなら、両方の情報が要ります。

もちろん、多くの人は会社設立をしたあと長く続けます。たたむ話は例外的な展開です。ただ、例外が起きたときの負担を知らずに決めるのは避けたいところです。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月26日確認)

会社をたたむのにかかる費用

会社をたたむのにかかる費用を表したイラスト
出るのにも、入るのと同じくらいかかります

会社をたたむときにかかる費用を、項目ごとに見てみます。まず登記です。解散と清算人選任の登記に登録免許税がかかり、清算結了の登記にもかかります。

次に官報公告です。会社法では、解散したら債権者に対して公告をすることとされています。官報の掲載料は行数で決まり、解散公告でおよそ4万円前後というのがひとつの目安です。

そして専門家への報酬です。清算の手続きを司法書士に頼めば数万円から、清算の申告を税理士に頼めばさらにかかります。自分でやることも不可能ではありませんが、書類の数が多く、期間も長くなります。

会社をたたむときにかかるお金(目安)
合計するとおよそ18万円前後。会社設立の実費と同じくらいかかります

合計すると、株式会社の設立実費と同じくらいの金額になります。入るのにかかった額と同じくらい、出るのにもかかるということです。

加えて、たたむまでの期間中も均等割はかかります。清算に半年かかれば、その事業年度の均等割も必要になります。法人成りしてすぐにたたむと、費用だけが残る形になります。

こうした費用は、会社設立の判断のときにはほとんど考慮されません。しかし、事業の見通しが不安定な個人事業主にとっては、無視できない要素です。

それに、たたむと決めた時点では事業がうまくいっていないことが多いはずです。手元の資金が細っているときに18万円前後の支出が必要になる。この順番の悪さも、会社設立を判断するときには頭に入れておいてください。

金額そのものより、「戻すのにこれだけかかる」という事実が判断の重みを変えます。

出典登記手数料について (法務省/2026年8月26日確認)

たたむまでの流れと、かかる期間

たたむまでの流れと、かかる期間を表したイラスト
公告の2か月は、どうやっても縮みません

会社をたたむ流れを順に見ていきます。期間が読めるようになると、判断の材料になります。

会社をたたむまでの流れ(目安)
公告の期間があるため、急いでも短くはできません

いちばん時間を食うのが公告の期間です。債権者に申し出る機会を与えるための期間で、2か月を下回ることはできません。ここは手続きを急いでも短縮できない部分です。

そのあとに財産の整理があります。売掛金の回収、買掛金や借入の弁済、リースの解約。取引先との調整が必要になるので、実務ではさらに時間がかかります。

そして申告です。解散の日までの事業年度の申告と、清算中の事業年度の申告が必要になります。個人事業主の廃業のときに出す確定申告とは、手間の質が違います。

全体では3か月から半年程度みておくのが現実的です。この間も会社は存在し続けるので、均等割や、場合によっては税理士報酬も発生します。

それから、清算中も帳簿はつけ続けます。事業を止めていても、財産の整理は取引として記録が要ります。個人事業主の廃業なら年内の記帳で終わるところが、法人成りしていると清算が終わるまで続くということです。

会社設立をするときには、こうした出口の日程まで考える人はほとんどいません。ただ、事業の見通しが読みにくい状態で法人成りするなら、頭の片隅に置いておく価値があります。

出典商業・法人登記の申請書様式 (法務局/2026年8月26日確認)

休眠という選択肢と、その限界

休眠という選択肢と、その限界を表したイラスト
止められますが、消えるわけではありません

会社をたたむのが大変なら、休眠にしておくという選択肢もあります。事業を止めて、届出を出して、会社の形だけ残しておく方法です。

休眠にすれば、清算の手続きと費用は当面かかりません。事業を再開する見込みがあるなら、この形をとる意味があります。会社設立をやり直すより、休眠から戻すほうが簡単だからです。

ただし、注意点があります。法人住民税の均等割が、休眠中も課されることがあります。免除の扱いは自治体によって違うので、休眠の届出をする前に確認してください。

また、休眠中も申告義務は残ります。事業をしていなくても、事業年度ごとに申告書を出す必要があります。これを怠ると青色申告の承認が取り消されることがあります。

役員の任期にも注意が要ります。任期が満了すれば重任の登記が必要で、登記を長く放置すると過料の対象になることがあります。会社を放置しておけばよい、というわけではありません。

それから、長期間登記がされていない会社は、みなし解散の対象になることがあります。放置していたら勝手に解散扱いになっていた、という事態も起こりえます。

つまり休眠は「一時停止」であって「なかったことにする」手段ではありません。会社設立をしたら、たたむか続けるかの判断はいずれ必要になります。

休眠を選ぶ場合も、税務署と都道府県と市町村のそれぞれに届出が要ります。会社設立のときに3か所へ設立届を出したのと同じで、止めるときも3か所です。窓口ごとに扱いが違うので、それぞれに確認してください。

個人事業主に戻って事業を続けながら、法人は休眠にしておく、という形をとる方もいます。この場合、二重の管理が必要になる点は覚えておいてください。

出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月26日確認)

法人成りしたあと、個人事業主に戻れるのか

法人成りしたあと、個人事業主に戻れるのかを表したイラスト
戻れます。ただし、それも簡単ではありません

会社をたたんで個人事業主に戻ること自体は可能です。実際にそうする方もいます。ただ、単に会社をやめれば元に戻る、というわけではありません。

まず、個人事業主として再び開業する手続きが要ります。個人事業の開業・廃業等届出書を出し、青色申告をするなら承認申請も改めて必要です。法人成りのときに取りやめているので、また申請するところからになります。

次に、名義を戻す作業があります。会社名義にした契約、口座、リース、許認可。法人成りのときに移したものを、今度は個人名義に戻すことになります。相手方の手続きも必要なので、時間がかかります。

許認可については、とくに注意が必要です。法人として取得した許可が個人に移るとは限りません。業種によっては新規に取り直しになります。所管の窓口に必ず確認してください。

資産の移転も問題になります。会社の資産を個人に移すには、売買や現物分配といった形をとることになり、そこに課税関係が生じます。法人成りのときと同じ問題が、逆向きに起きるということです。

取引先への案内も、もう一度必要になります。会社設立のときに商号と口座を案内し、今度は個人名義に戻す案内をする。信用の面では、あまり良い印象を与えません。

こうしたことを考えると、「合わなければ戻せばいい」という気軽さでは法人成りを決められません。戻れるが、戻るのも大変というのが実態です。

なお、会社を残したまま個人事業主としての事業も始める、という形も制度上は可能です。ただしこの場合、法人と個人の両方で申告が要り、取引の切り分けも必要になります。手間を減らすつもりが増えることもあるので、慎重に考えてください。

だからこそ、会社設立の判断は3年分の数字と見通しを並べてから行う価値があります。

出典A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続 (国税庁/2026年8月26日確認)

戻す事態を避けるために、入口でできること

戻す事態を避けるために、入口でできることを表したイラスト
入口を丁寧にすれば、出口は使わずに済みます

戻す事態を避けるいちばんの方法は、入口で慎重に判断することです。具体的に何を確かめておけばよいかを挙げます。

会社設立の前に確かめておくこと
入口で確かめておけば、出口を使わずに済みます

とくに大事なのが、売上の振れ幅を見ることです。良い年の数字だけを見て法人成りすると、悪い年に固定費が重くのしかかります。

それから、役員報酬を生活費から逆算しておくこと。報酬を高く置きすぎて資金繰りが苦しくなる、というのは会社設立の初年度によくある失敗です。

許認可の確認も忘れないでください。法人への承継ができない業種で、順番を間違えて廃業届を先に出してしまうと、事業が止まります。

そして、増える負担を金額で見積もっておくこと。年90万円前後が新たに出ていくと分かっていれば、それを上回る効果があるかを冷静に判断できます。

これらを確かめてから会社設立をすれば、数年で戻すことになる可能性はかなり下がります。個人事業主として積み上げてきた数字があれば、確認は難しくありません。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月26日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

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それでも戻すことになったときの順番

それでも戻すことになったときの順番を表したイラスト
許認可と取引先を、いちばん先に確かめます

それでも会社をたたんで個人事業主に戻ることになった場合、順番が大事になります。間違えると事業が止まるので、確認する順に並べておきます。

まず許認可です。法人として持っている許可を個人に移せるのか、取り直しになるのか。ここが決まらないと、いつ会社をたためるかも決まりません。所管の窓口に最初に相談してください。

次に取引先です。契約の名義を個人に戻す必要があるので、相手方の了解と手続きの期間を確かめます。取引先によっては個人事業主とは契約できないところもあるので、その場合は取引の終了も含めて考えることになります。

そのうえで、個人事業主としての開業手続きをします。開業届と、青色申告をするなら承認申請。青色申告の承認申請には期限があるので、遅れると初年度に控除が使えません。

会社の資産をどう処分するかも決めます。個人に移すのか、売却するのか、廃棄するのか。それぞれで課税関係が変わるので、税理士に相談してから動いてください。

最後に会社の清算です。解散の決議、登記、公告、財産の整理、清算結了。ここまでで数か月かかります。

この順番を守れば、事業を止めずに個人事業主へ戻れます。逆に、会社の清算を先に進めてしまうと、許認可や契約が宙に浮きます。

会社設立のときと同じで、戻すときも「動かせないものから先に確かめる」のが原則です。

出典D1-14 事業廃止届出手続 (国税庁/2026年8月26日確認)

出口を知ったうえで、入口を判断する

出口を知ったうえで、入口を判断するを表したイラスト
出口を知れば、入口が慎重になります

ここまで出口の話をしてきました。読んで「思ったより大変だ」と感じた方も多いと思います。それが正しい感覚です。

会社設立は事業の形を変える決断であって、試しにやってみる類のものではありません。個人事業主として何年も続けてきた事業を、別の器に移し替える作業です。

だからこそ、判断は数字と見通しで行います。課税所得の帯、売上の振れ幅、増える負担の合計、そして税以外の事情。これらを並べて、それでも法人成りする理由があるなら踏み切る。

逆に、迷いが残るなら急がなくてかまいません。会社設立はいつでもできます。条件がそろうまで個人事業主として続けるほうが、結果的に良い選択になることもあります。

出口の話をここまで詳しく書いたのは、脅すためではありません。入口の判断を丁寧にしてもらうためです。丁寧に決めた法人成りは、そう簡単には戻すことになりません。

実際、しっかり数字を見て会社設立をした人が数年で戻すというのは、あまり聞きません。戻すことになるのは、勢いで決めた場合や、条件を確かめなかった場合がほとんどです。

自分の判断がどちらなのかを、いま一度確かめてみてください。

そして、判断に迷うなら専門家に当ててください。会社設立の前に相談するほうが、たたむときに相談するよりずっと安く済みます。

出典税理士に関する情報 (国税庁/2026年8月26日確認)

まとめ|出口の重さを知ってから、入口を決める

まとめ|出口の重さを知ってから、入口を決めるを表したイラスト
出口を見てから、入口を決めます

会社設立は数週間でできますが、たたむには3か月から半年かかり、費用も設立と同じくらいかかります。個人事業主の廃業届とは、手間の質がまったく違います。

休眠という選択肢もありますが、均等割が残ることがあり、申告義務も続きます。放置すればみなし解散の対象になることもあります。「止めておく」ことはできても「なかったことにする」ことはできません。

  • たたむ費用登記と公告と報酬で18万円前後。会社設立の実費と同じくらい
  • たたむ期間公告の2か月を含めて、3か月から半年
  • 休眠の限界均等割が残ることがある。申告義務も続く
  • 戻る道可能だが、許認可と名義と資産の問題が逆向きに起きる

この重さを知ったうえで、入口の判断を丁寧にしてください。3年分の課税所得、売上の振れ幅、増える負担の合計、税以外の事情。これらを並べて決めた法人成りなら、戻すことになる可能性はかなり下がります。

会社設立を急かされている状況でも、この確認だけは飛ばさないでください。数日の遅れより、数年後の後悔のほうがずっと高くつきます。

出典会社設立でかかる維持費や年間費用は? (マネーフォワード/2026年8月26日確認)

「戻すとしたら」を一度だけ想像してみてください

会社設立をする前に、たたむときのことを一度だけ想像してみてください。3か月から半年、費用は18万円前後、許認可も名義も逆向きに動かすことになる。それを知ったうえでも進みたいなら、その判断は確かです。

迷いが残るなら、急ぐ必要はありません。個人事業主として続けながら条件がそろうのを待つのも、立派な選択です。

判断に自信が持てないときは、会社設立の前に専門家へ相談してください。入口で相談するほうが、出口で相談するよりずっと安く済みます。

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個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

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