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法人成りで資産を引き継ぐ4つの方法|個人事業主の車・機械・在庫をどう移すか

個人事業主 法人成り 資産 引継ぎ 公開 2026年8月25日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約6,119字

個人名義の資産をどうするか決めたい方へ

会社設立をしたあと、いままで使ってきた車や機械やパソコンをどうするのか。そのまま使い続けていいのか。そこで手が止まる個人事業主の方に向けたページです。

移し方は4つあります。 売買、現物出資、賃貸借、そして移さない。それぞれ手間も税務も違うので、資産ごとに選ぶことになります。

何も決めずに使い続けるのがいちばん困ります。決算のときに整理できなくなるので、会社設立の前に決めておいてください。

何も決めないまま使い続けるのがいちばん困る

何も決めないまま使い続けるのがいちばん困るを表したイラスト
決めないことが、いちばんの問題です

会社設立をしたあと、個人事業主のときに使っていた車や機械をそのまま使い続ける。これがいちばん多い形で、いちばん困る形でもあります。

会社が個人の資産を使っているなら、売買なのか賃貸なのか現物出資なのか、どれかの形になっているはずです。何も決めていないと、この関係が宙に浮きます。

決算のときに、その資産をどちらの帳簿に載せるかで迷います。減価償却をどちらでするのか、修繕費をどちらの経費にするのか。判断できません。

時間が経つほど、当時の状況を思い出せなくなります。会社設立から2年経ってから整理しようとすると、資料も記憶も薄れています。

だから、法人成りの前に個人名義の資産を一覧にして、それぞれをどうするかを決めてください。決めてしまえば、あとは決めたとおりに処理するだけです。

すべてを法人に移す必要はありません。移さないという選択も、立派な選択肢のひとつです。

大事なのは、決めることと、決めた内容を記録に残すことです。

個人事業主として使ってきた道具には、事業用と私用の境目が曖昧なものもあります。車、パソコン、スマートフォン。会社設立の前に、どこまでを事業のものとして扱ってきたかを整理しておくと、移し方も決めやすくなります。

以下、4つの方法を順に見ていきます。それぞれの向き不向きを並べます。

法人成りの相談でいちばん時間がかかるのが、この資産の引継ぎです。会社設立の手続きそのものは型が決まっていますが、何をどう移すかは事業ごとに違います。個人事業主として持っているものが多いほど、決めることも増えます。

個人事業主として長く続けてきた方ほど、資産の数が多くなります。一覧を作るところから始めてください。

出典No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法 (国税庁/2026年8月26日確認)

方法1|売買——いちばん分かりやすい

方法1|売買——いちばん分かりやすいを表したイラスト
価格を帳簿価額にするのが基本です

いちばん分かりやすいのが売買です。法人が個人から資産を買い取る。売買契約を作って、価格を決めて、代金を支払います。

法人側では、買った資産を固定資産として計上し、以後は法人で減価償却をします。個人側では、売却したものとして処理します。

価格の決め方が重要です。極端に安い価格で移すと、実際の価値との差額が問題になることがあります。実務では帳簿価額を基準にすることが多いところです。

個人側では、この売却が譲渡所得になることがあります。国税庁は譲渡所得の対象となる資産と課税方法について説明を出しています。事業用の資産も対象です。

ただし、帳簿価額で売れば売却益は出ないので、譲渡所得も生じません。だから帳簿価額を基準にする形がよく使われます。

代金の支払いは、すぐに全額を払わなくても構いません。会社設立の直後は資金が少ないので、未払金として計上して分割で払う形もとれます。

ただし、いつまでも払わないままだと、実質的に贈与とみなされるおそれがあります。返済の計画は決めておいてください。

個人事業主のときに購入した資産の帳簿価額は、確定申告書に添付した減価償却の明細で確かめられます。会社設立の前に、その明細を手元に出しておいてください。

車のように名義変更が必要なものは、運輸支局での手続きも発生します。売買契約と名義変更をセットで進めてください。

法人成りのときに売買を選ぶ人が多いのは、あとから説明しやすいからでもあります。契約書と代金の記録が残るので、会社設立から何年か経っても経緯をたどれます。

個人事業主のときの資産を法人に移す方法として、いちばん素直な形です。

出典No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法 (国税庁/2026年8月26日確認)

方法2|現物出資——資本金に充てる

方法2|現物出資——資本金に充てるを表したイラスト
手続きが増えるので、必要性を見ます

現物出資は、お金の代わりに資産を出資して、その分の株式や持分を受け取る方法です。会社設立のときに使えます。

手元の現金を出さずに資本金を厚くできるので、資金が少ない場合には有効です。個人事業主のときの機械や車を、そのまま資本金に充てられます。

ただし手続きが増えます。出資する資産の価額が適正かどうかを確かめる必要があり、一定の場合には検査役の調査が求められます。

金額が小さい場合や、一定の要件を満たす場合には、この調査が不要になる例外もあります。会社設立の実務では、この例外に収まる範囲で行うことが多くなります。

定款にも、現物出資する財産とその価額、割り当てる株式数などを記載することになります。設立の書類が複雑になるので、専門家に頼むことが多い部分です。

それから、現物出資も税務上は譲渡として扱われます。個人側で譲渡所得の問題が生じる可能性があるのは、売買と同じです。

消費税についても、課税の対象になることがあります。個人が課税事業者だった場合は注意が必要です。

手間を考えると、会社設立のときにわざわざ現物出資にする必要があるかどうかは検討の余地があります。

法人成りの実務では、現物出資が選ばれる場面はそれほど多くありません。会社設立の手続きが重くなるわりに、売買で同じ結果に近づけられるからです。

資金に余裕があるなら、現金で出資して、資産は売買で移すほうが簡単です。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月26日確認)

方法3|賃貸借——所有は個人のまま

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移転の費用が大きいものに向きます

賃貸借は、資産の所有を個人のままにして、法人が使用料を払う形です。名義変更が不要なので、手続きがいちばん軽くなります。

不動産のように移転に登記と税金がかかるものは、この形がよく使われます。会社設立のときに所有権を移すと、登録免許税や不動産取得税がかかるからです。

法人側では、支払った賃料が経費になります。個人側では、受け取った賃料が不動産所得や雑所得になります。

この形の利点は、所得を分散できることです。法人の利益、役員報酬、そして個人の賃料収入。受け取り方が増えるぶん、設計の幅が広がります。

ただし、賃料の額が適正でないと問題になります。相場からかけ離れた額を設定すると、役員給与として扱われるおそれがあります。

賃貸借契約は書面で作ってください。関係者間の取引なので、契約書がないと条件が曖昧になります。

車についても、この形はとれます。個人名義のまま法人に貸して、使用料を受け取る。名義変更の手間がないので、実務では選ばれることがあります。

個人事業主のときの自動車保険をそのまま使う場合、契約の内容によっては法人の業務での使用が対象外になることがあります。会社設立のあとに保険会社へ確認しておくと安心です。

ただし、保険や税金の名義が個人のままなので、経費の処理が複雑になることもあります。

法人成りをしても不動産の名義は個人のまま、というのはよくある形です。会社設立の費用を抑えられますし、個人に賃料収入が入るので所得の分散にもなります。

個人事業主として不動産を持っている方は、この形をまず検討してください。

出典No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) (国税庁/2026年8月26日確認)

方法4|移さない——個人の私物にする

方法4|移さない——個人の私物にするを表したイラスト
少額なものは、無理に移しません

4つめは、移さないという選択です。事業から外して、個人の私物にする。パソコンや工具など、少額のものはこの形で構いません。

個人事業主のときに減価償却が終わっている資産や、帳簿価額がほとんど残っていない資産なら、わざわざ移す意味は薄くなります。

ただし、法人がその資産を使い続けるなら話が変わります。実際に事業で使っているのに個人の私物という整理は、実態と合いません。

使わないものは処分する、という判断もあります。売却するのか、廃棄するのか。処分の方法によって処理が変わります。

会社設立を機に、使っていない資産を整理するのはよい機会です。個人事業主として長く続けていると、使わないまま帳簿に残っている資産が出てきます。

廃棄する場合は、その事実を記録に残してください。帳簿から落とす処理が必要になります。

それから、法人が新しく買い直すという選択もあります。古い資産を個人に残して、法人では新品を買う。金額次第では、こちらが合理的なこともあります。

何を移して何を移さないかは、金額と使用状況で決めてください。

法人成りは事業を移す作業であって、持ち物をすべて移す作業ではありません。会社設立をしたからといって、私物まで法人に付け替える必要はありません。

全部を移す必要はないという点は、覚えておいてください。

出典No.2210 必要経費の知識 (国税庁/2026年8月26日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

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4つを比べる

4つを比べるを表したイラスト
資産ごとに、違う方法を選べます

4つの方法を並べて比べます。資産ごとに違う方法を選んで構いません。

4つの引継ぎ方法の比較
方法 向いている資産 手間 注意点
売買 車・機械・在庫 価格の決め方。譲渡所得の有無
現物出資 資本金を厚くしたい場合 定款への記載。調査が必要な場合も
賃貸借 不動産・高額な設備 賃料の額。契約書を作る
移さない 少額・使わないもの 法人が使うなら実態と合わない

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いずれも一般的な整理です。金額が大きい場合は、税理士にご確認ください。

実務でいちばん多いのが売買です。分かりやすく、帳簿価額で移せば譲渡所得も生じにくいからです。

不動産だけは賃貸借を選ぶことが多くなります。移転の費用が大きいためです。

現物出資は手続きが重いので、会社設立のときに資金が足りない場合に限られます。

移さないという選択は、少額なものに向きます。ただし法人が使い続けるなら、実態と合わない点に注意してください。

法人成りの引継ぎは、一律に決めるものではありません。会社設立のときに車は売買、不動産は賃貸借、工具は移さない、という組み合わせで構いません。

個人事業主のときの資産を一覧にして、それぞれにこの4つのどれかを割り当ててください。それが引継ぎの計画になります。

出典法人成りでの資産引継ぎ方法とは?資産の種類や仕訳方法・注意点を解説 (創業手帳/2026年8月26日確認)

在庫の扱いは別に考える

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棚卸表を作るところから始めます

在庫は固定資産とは扱いが違うので、別に考える必要があります。会社設立の直前に棚卸をして、数量と金額を確定させるところから始めます。

国税庁は、たな卸資産の自家消費や低額譲渡についての取扱いを示しています。個人から法人へ移すときの価格の決め方に関わる部分です。

極端に安い価格で法人に移すと、実際の価値との差額が問題になることがあります。通常の販売価額との関係で、一定の基準が示されています。

実務では、仕入価格または通常の販売価額を基準に価格を決めることになります。金額が大きい場合は、税理士に確かめてから決めてください。

個人側では、この取引が売上として計上されます。法人側では仕入として計上されます。両方の帳簿に同じ取引が記録される形です。

消費税についても、個人が課税事業者だった場合は課税売上になります。免税事業者だったなら、その必要はありません。

在庫を移さずに個人で処分する形もあります。ただし、法人が同じ商品を扱うなら、移すのが自然です。

棚卸表は必ず作ってください。あとから作ることはできません。

法人成りの日に在庫がゼロになる事業なら、この作業は要りません。逆に常時在庫を抱える事業では、会社設立の前後がいちばん忙しい時期になります。

個人事業主として物を扱う事業をしている方は、会社設立の日程にこの作業を組み込んでください。

出典法第39条《たな卸資産等の自家消費の場合の総収入金額算入》関係 (国税庁/2026年8月26日確認)

記録を残すことがいちばん大事

記録を残すことがいちばん大事を表したイラスト
記録があれば、処理はあとでもできます

どの方法を選ぶにせよ、記録を残すことがいちばん大事です。何を、いつ、いくらで、どの方法で移したのか。

引継ぎのときに残す記録
あとから復元するのは、ほぼ不可能です

この記録がないと、決算のときに税理士から質問されて答えられなくなります。個人と法人の帳簿が合わない原因にもなります。

契約書は、関係者間の取引だからこそ作ってください。自分と自分の会社の取引でも、書面がないと条件が曖昧になります。

価格の根拠も残しておいてください。帳簿価額で移したなら、そのときの帳簿を残す。相場を調べたなら、その資料を残す。

会社設立の直後は忙しいので、こうした記録が後回しになりがちです。ただ、あとから作るのは難しくなります。

個人事業主としての帳簿も、しばらくは手元に置いておいてください。引継ぎの根拠になります。

法人成りから何年か経って税務調査を受けたときに、この記録が効いてきます。会社設立のときにどう移したのかを説明できるかどうかで、話の進み方が変わります。

記録さえあれば、処理はあとからでもできます。

出典No.5930 帳簿書類等の保存期間 (国税庁/2026年8月26日確認)

まとめ|一覧を作って、資産ごとに方法を決める

まとめ|一覧を作って、資産ごとに方法を決めるを表したイラスト
決めて、記録する。これだけです

会社設立をしたあと、個人事業主のときの資産をどう移すか。方法は4つあります。売買、現物出資、賃貸借、そして移さない。

実務でいちばん多いのが売買です。帳簿価額で移せば譲渡所得も生じにくく、処理が分かりやすいからです。

  • 売買車・機械・在庫に向く。帳簿価額を基準に
  • 現物出資資本金を厚くしたい場合。手続きが重い
  • 賃貸借不動産に向く。移転の費用がかからない
  • 移さない少額なもの。法人が使うなら実態と合わない

在庫は固定資産とは扱いが違うので、別に考えてください。棚卸表を作って、価格の決め方を確かめてから移します。

いちばん困るのは、何も決めないまま使い続けることです。決算のときに整理できなくなるので、会社設立の前に決めておいてください。

そして、記録を残すこと。何をいついくらでどの方法で移したか。これがあれば、処理はあとからでもできます。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月26日確認)

個人名義の資産を、まず一覧にしてください

車、機械、パソコン、工具、在庫。個人事業主として使ってきた資産を一覧にして、それぞれに4つの方法のどれかを割り当ててください。それが会社設立後の引継ぎ計画になります。

金額が大きいものは、税理士に相談してから決めてください。引継ぎの方法によって、個人側と法人側の税負担が変わります。

そして記録を残してください。何をいついくらで移したか。あとから復元するのは、ほぼ不可能です。

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個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

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