本文へ移動

株式会社と合同会社、個人事業主はどちらを選ぶか|法人成りの器の決め方

個人事業主 会社設立 株式会社 合同会社 公開 2026年8月26日 最終更新 2026年9月1日 運営者:サイト運営事務局 本文 約5,993字

会社の種類で迷っている方へ

法人成りをすると決めたけれど、株式会社と合同会社のどちらにすればいいのか。費用が安いのは合同会社だと聞くけれど、それだけで決めていいのか。そこで迷う個人事業主の方に向けたページです。

費用の差は10万円前後です。 一度きりの費用としては小さくないですが、判断の中心にするほどではありません。

見え方、機関の仕組み、意思決定、将来の選択肢。費用以外の材料も並べて、自分に合う器を選んでください。

費用の差は10万円前後

費用の差は10万円前後を表したイラスト
実費で10万円前後、維持でも差が出ます

まず費用から見ます。国税庁の税額表によれば、設立登記の登録免許税は株式会社が資本金の1,000分の7で最低15万円、合同会社が同じ計算で最低6万円です。ここで9万円の差が出ます。

加えて、株式会社には定款の認証が必要です。日本公証人連合会の案内によれば、手数料は資本金等の額に応じて区分されています。合同会社には認証がありません。

これらを合わせると、会社設立の実費で10万円前後の差になります。株式会社が20万円前後、合同会社が10万円前後というのが目安です。

個人事業主が法人成りするときに、この差は小さくありません。ただ、一度きりの費用です。毎年かかる維持費に比べれば、判断への影響は限られます。

維持費についても差があります。株式会社には役員の任期があるので、満了ごとに重任の登記が必要です。合同会社にはこの仕組みがありません。

決算公告の義務も、株式会社にはあって合同会社にはありません。官報に載せるなら掲載料がかかります。

つまり、費用の面では合同会社のほうが軽くなります。会社設立の実費でも、維持の手間でも。

なお、資本金を大きくすると登録免許税も増えるので、株式会社と合同会社の差は資本金の額によって変わります。資本金が2,000万円を超えるあたりからは、1,000分の7の計算のほうが上回ってきます。

それでも株式会社を選ぶ人がいるのは、費用以外の理由があるからです。

会社設立の相談を受ける側から見ると、費用だけで合同会社を選んで後悔する個人事業主もいれば、見え方だけで株式会社を選んで維持の手間に驚く個人事業主もいます。どちらの器にも向き不向きがあるということです。

以下、その理由を順に見ていきます。

出典No.7191 登録免許税の税額表 (国税庁/2026年8月26日確認)

対外的な見え方の違い

対外的な見え方の違いを表したイラスト
相手によって、反応が違います

株式会社と合同会社では、対外的な見え方が違うと言われます。実際のところ、どれくらい違うのでしょうか。

結論から言えば、相手によります。大企業の購買部門や官公庁では、法人であることが条件で、種類までは問わないことがほとんどです。

一方で、合同会社という形態自体をよく知らない相手もいます。とくに一般消費者を相手にする事業では、株式会社のほうが通りがよいと感じる場面があります。

業種によっても差があります。企業向けのサービス業や制作業では合同会社が増えていますが、小売や飲食では株式会社のほうが多い印象があります。

採用の面でも差が出ることがあります。求職者が会社の形態を気にするかどうかは人によりますが、知名度のない合同会社より株式会社のほうが安心されることはあります。

合同会社という形態は年々増えていて、名前を知られた会社も出てきています。数年前より抵抗は小さくなっている、という実感を持つ人もいます。

ただし、これらはすべて印象の話です。取引ができない、採用できないという話ではありません。

個人事業主として法人成りする場合、相手はすでにあなたの仕事を知っています。会社設立で種類がどちらでも、仕事の中身が変わるわけではありません。

新規の取引を取りにいく場面で、種類が影響するかどうか。そこを考えてみてください。

個人事業主として長く取引してきた相手なら、会社設立の種類まで気にすることはまずありません。気にされるとしたら、これから新しく取引を始める相手のほうです。

自分の事業の相手が誰かで、この判断は決まります。

出典株式会社と合同会社の違いは?特徴とメリットを比較表でわかりやすく解説 (弥生/2026年8月26日確認)

機関の仕組みが違う

機関の仕組みが違うを表したイラスト
一人なら、ほとんど差はありません

株式会社では、お金を出す人(株主)と経営する人(役員)が制度上は分かれています。株主総会で役員を選び、役員が経営をするという建て付けです。

合同会社では、出資した人がそのまま経営に関わります。出資者は社員と呼ばれ、業務執行社員が経営を担います。

この違いは、複数人で出資する場合に効いてきます。株式会社なら出資の割合で議決権が決まりますが、合同会社なら定款で自由に決められます。

個人事業主がひとりで法人成りする場合、この違いはほとんど意味を持ちません。自分が出資して自分が経営するので、どちらでも同じだからです。

将来、外部から出資を受ける予定があるなら株式会社が向きます。株式という形で出資を受け入れやすいからです。

逆に、家族や仲間と少人数で始めるなら、合同会社の柔軟さが効くこともあります。利益の配分を出資割合と違う形にできるからです。

株式会社には役員の任期があります。定款で最長まで伸ばすことはできますが、満了すれば登記が必要です。合同会社にはこの仕組みがありません。

会社設立のときにひとりでも、将来人が増えることを考えるなら、この違いを見ておいてください。

会社設立の時点で人を入れる予定があるなら、機関の設計も含めて専門家に相談してください。個人事業主のときには考える必要のなかった論点です。

個人事業主として一人でやってきた方なら、当面は差が出ない部分です。

出典屋号、商号、事業所名の違いを徹底解説します|GVA 法人登記 (GVA 法人登記/2026年8月26日確認)

意思決定と手続きの軽さ

意思決定と手続きの軽さを表したイラスト
運営の手間は、合同会社のほうが軽い

会社を動かすときの手続きにも差があります。株式会社では、重要な決定に株主総会が必要です。議事録も作ることになります。

合同会社では、社員の同意で決められます。書類の形式も比較的簡素です。

ひとりで会社設立をする場合、株主総会といっても自分ひとりの会議です。それでも議事録は作ることになるので、手間としては残ります。

定款の変更、役員の変更、本店の移転。こうした場面で、株式会社のほうが書類が増えます。

決算公告の義務も、株式会社にはあります。官報に載せるなら掲載料がかかりますし、電子公告にするなら定款の定めが必要です。

実務では、決算公告をしていない小さな株式会社も多くあります。ただし義務としては存在するので、そこは理解しておいてください。

合同会社にはこの義務がないので、その分だけ運営が軽くなります。

個人事業主が法人成りする目的が、事業を続けるための器を作ることなら、運営の軽い合同会社という選択は合理的です。

個人事業主が法人成りをするとき、手続きの軽さは意外と効いてきます。本業を止められない状態で会社設立を進めるので、書類が少ないほうが助かります。

会社設立の手続きも、合同会社のほうが簡素です。定款の認証がないので、日数も短くなります。

出典合同会社設立登記申請書(代表社員が法人でない場合) (法務局/2026年8月26日確認)

あとから株式会社に変えられる

あとから株式会社に変えられるを表したイラスト
変えられますが、手間はかかります

合同会社で会社設立をしたあと、株式会社に変えることもできます。組織変更という手続きです。

ただし、簡単ではありません。組織変更の計画を作り、債権者に対する公告と催告をして、一定の期間を置いてから登記をします。

公告には官報の掲載料がかかりますし、登記にも登録免許税がかかります。時間も1か月以上かかるのが通常です。

つまり、あとから変えるには手間と費用がかかります。最初から株式会社にしておけば済んだ話が、二度手間になるということです。

それでも、変えられるという事実は知っておいてください。合同会社で始めて、事業が育ってから株式会社にするという道はあります。

実際に、そういう進め方をする会社もあります。まず合同会社で会社設立をして負担を抑え、規模が大きくなってから組織変更する形です。

逆に、株式会社から合同会社に変えることもできます。維持の手間を減らしたい場合です。

個人事業主が法人成りするときに、将来の見通しが立たないなら、まず合同会社という判断もありえます。

個人事業主から法人成りする段階では、数年先の姿まで見通せないことのほうが多いはずです。会社設立の時点で完璧に決めようとせず、いまの条件で選ぶという考え方でかまいません。

ただし、変えるつもりが最初からあるなら、株式会社で始めるほうが結局は安く済みます。

出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月26日確認)

会社設立そのものより、法人成りしたあとの設計で差がつきます

個人事業主のうちに決めておくこと(役員報酬・決算期・社会保険の入り方)は、あとから直すと手間もお金もかかります。法人成りの前後をまとめて見てくれる相手に、いちど当ててみるのが早道です。

無料で相談してみる

※ 当サイトは会計事務所SoVaの「士業伴走プラン」を紹介しています。同プランの設立サポートは freee会社設立 を利用する前提で、設立サポート手数料0円は顧問契約(月1.5万円〜)とあわせて依頼する場合の条件です。当サイトは一般的な解説であり、法人成りの判断や個別の税務は税理士などの専門家にご相談ください。最新の料金・条件は必ず公式ページでご確認ください。

選び方の目安

選び方の目安を表したイラスト
条件に合うほうを、選んでください

ここまでを踏まえて、選び方の目安を並べます。

株式会社と合同会社の選び方
費用だけでなく、将来の見通しも見て決めます

当面ひとりで続けるつもりで、費用と手間を抑えたいなら合同会社。外部から出資を受ける予定や、一般消費者向けで知名度が要るなら株式会社。

迷ったら、取引先や求職者からどう見られたいかを考えてみてください。個人事業主として付き合いのある相手に聞いてみるのも手です。

同業の会社がどちらを選んでいるかも参考になります。業界の慣習が影響することもあります。

そして、費用の差は10万円前後です。この額で判断が変わるかどうかを、自分に問いかけてみてください。

個人事業主として続けてきた事業の性質を、いちばんよく知っているのは自分です。会社設立の種類も、その延長で決められます。

会社設立は事業の器を作る作業です。器の形は、事業の中身に合わせて選んでください。

出典株式会社と合同会社の違いは?特徴とメリットを比較表でわかりやすく解説 (弥生/2026年8月26日確認)

よくある誤解を整理する

よくある誤解を整理するを表したイラスト
制度上の差と、印象の差を分けます

この論点でよくある誤解を整理しておきます。

まず、「合同会社は信用が低い」というもの。制度上、法人であることに変わりはありません。登記もされますし、法人としての権利義務も同じです。印象の問題であって、法的な差ではありません。

次に、「合同会社は上場できない」というもの。これは事実ですが、個人事業主が法人成りする段階では関係のない話です。上場を目指すなら、その段階で組織変更すれば足ります。

それから、「合同会社は税金が安い」というもの。これは違います。法人税の計算は同じです。違うのは会社設立の実費と、維持の手間だけです。

「株式会社でないと融資が受けられない」というのも誤解です。金融機関が見るのは事業の中身と決算の内容で、会社の種類ではありません。

「合同会社は社長と名乗れない」というのも正確ではありません。代表社員が正式な呼び方ですが、対外的に代表取締役以外の肩書きを使うこと自体は妨げられていません。

こうした誤解が、判断を曇らせます。制度上の差と印象の差を分けて考えてください。

個人事業主が法人成りする段階で本当に効いてくるのは、費用、運営の手間、そして相手からの見え方です。

将来のことを考えすぎると、決められなくなります。数年先に必要になったら、そのときに手を打てば足ります。

それ以外の話は、当面は関係ないことが多くなります。

個人事業主が法人成りを考えるときに、上場や大規模な資金調達の話まで持ち出す必要はありません。会社設立の判断は、いまの事業の規模に見合った材料で足ります。

会社設立の判断は、いま効く条件で決めてください。

出典個人事業と法人のどちらがよいか (中小機構/2026年8月26日確認)

決めたあとの手続きの違い

決めたあとの手続きの違いを表したイラスト
登記のあとは、どちらも同じです

会社の種類を決めたら、手続きに入ります。株式会社と合同会社では、必要な書類が違います。

株式会社の場合、定款を作って公証人の認証を受けます。そのあと資本金を払い込み、設立登記を申請します。法務局は取締役会を置かない会社の発起設立などの様式を公開しています。

合同会社の場合、定款の認証がありません。定款を作って資本金を払い込み、登記を申請します。法務局は合同会社の設立登記についても様式を公開しています。

提出する書類の数も、合同会社のほうが少なくなります。就任承諾書などが不要になる場合があるためです。

日数も違います。株式会社は公証役場の予約が必要なので、その分だけ前倒しで準備することになります。

個人事業主が法人成りするときに日程が詰まっているなら、この差が効くこともあります。

どちらの場合も、登記が完了してからの手続きは同じです。税務署への届出、社会保険、法人口座の開設。

会社設立の手続きそのものは、種類によって多少の差はあっても大きくは変わりません。

個人事業主として本業が動いている以上、会社設立の準備に使える時間は限られます。種類の選択で何週間も迷うより、条件に合うほうを選んで手続きに入るほうが得です。

迷って時間を使うより、決めて動くほうが先に進みます。

出典株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立) (法務局/2026年8月26日確認)

まとめ|費用だけでなく、見え方と将来で決める

まとめ|費用だけでなく、見え方と将来で決めるを表したイラスト
事業に合う器を、選んでください

株式会社と合同会社の差は、会社設立の実費で10万円前後です。維持の面でも、役員の任期と決算公告の分だけ合同会社が軽くなります。

一方で、対外的な見え方には差があります。相手によっては株式会社のほうが通りがよい場面もあります。

  • 費用実費で10万円前後の差。維持でも合同会社が軽い
  • 見え方相手による。一般消費者向けでは株式会社が有利なことも
  • 機関一人ならほとんど差がありません
  • 将来外部からの出資を考えるなら株式会社

あとから組織変更もできますが、手間と費用がかかります。将来の見通しが立つなら、最初から合わせておくほうが安く済みます。

個人事業主が法人成りする段階では、費用、運営の手間、相手からの見え方。この3つで決めれば十分です。

どちらを選んでも、事業の中身は変わりません。会社設立は器を作る作業なので、事業に合う器を選んでください。

出典小規模企業支援 | 中小企業庁 (中小企業庁/2026年8月26日確認)

取引先の顔を思い浮かべてみてください

自分の事業の相手が誰か。企業や官公庁が中心なら、会社の種類はあまり問われません。一般消費者が中心なら、株式会社のほうが通りがよいこともあります。そこが判断の分かれ目になります。

費用の差は10万円前後です。一度きりの費用としては小さくありませんが、毎年かかる維持費に比べれば判断への影響は限られます。

あとから組織変更もできますが、手間と費用がかかります。将来の見通しが立つなら、最初から合わせておいてください。

このページは役に立ちましたか。

押しても個人が特定される情報は送られません。数は同じ端末から一度だけ増えます。

運営者:サイト運営事務局

個人事業主の会社設立と法人成りについて、国税庁・法務局・日本年金機構などの一次情報を確かめながらまとめています。記事の内容は執筆時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の判断は税理士など専門家と、所管の官庁にご確認ください。

他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください

この記事のテーマで実際に検索して出てきたサイトを並べました。並び順に優劣の意味はありません。個人事業主の会社設立や法人成りの扱いは、書き手によって前提の置き方が違います。数字は必ず一次情報でも確かめてください。

あわせて読むと、判断がはっきりします